私は、あなたの意見とは異なって、金銭的な利益で、発明のインセンティブには十分になると 思っています。なぜなら、資本主義社会における投資と、それに対する利益というのは、金銭的に あらわしうるものだからです。発明だから、もっと特別な保護が必要というのは、 実際のところ対称性に欠けると思います。それなら、油田開発、鉱山開発などにも独占権を つけるのが当然ですか? 昔はそういう独占契約が多かったですが、今ではすっかり 嫌われているのはご存知の通り。まあ、これは、一社ではリスクが多すぎるという別の側面も あるので、簡単には比較できませんが。
また、ライセンス料の算定基準についてですが、すでに、侵害賠償訴訟で、裁判によって 被害額を算定されているので、事実上、既に、第三者に、ある程度ライセンス料を決定されている 世の中になっています。(たとえば、「カーマーカー特許とソフトウェア」には、算定根拠が 数学モデルと共に説明されています。これが良いものかどうかは別問題ですが。)
さらに、当事者間で勝手にライセンスを決められるとなると、立場の強い側が、不公正に価格を 吊り上げることができ、これが独占の弊害の一つであることは明らかです。*1 むしろ、第三者がライセンス料の基準を示した方が、透明性があって、市場経済には好ましいでしょう。
でも、ここまでかいていて、思うんですが、こんなの既に著名な法学者や、経済学者が 考察済みなんですよ。アダムスミスだってずうっと昔に、特許の独占権に疑問を呈してます。 また、「コモンズ」にもありますが、法学教授Steven Shavellは、 「イノベーションを行うインセンティブをイノベーションにおける独占力の授与と結びつける必要はない」 と、疑問を提示して、ライセンス料形式への移行を提案していますし、また別の人は、 補助金システムのようなものも提案しています。
まあ、「コモンズ」や、「プロパテント・ウォーズ」あたりにある特許の独占の弊害に関する論拠を、 いろいろ調べてみるのも良いのではないでしょうか?「独占排他権」に賛成されるのは それからでも遅くないと思います。
L.Lessigも「コモンズ」で、こういってますよ。
現在の特許論争を支配しているのは、理性ではなく偏向だ---単に古いからというだけで正しく見えるシステムに有利な偏向
わたしは、偏向にとらわれるのは嫌いなので、冷静に特許制度を眺めているつもりですが、やっぱり、 「独占排他権」は、非常に特異なシステムだと思います。すくなくとも、簡単にうけいれることが できるほど、自明な話ではありません。
*1 IntelもMicrosoftも、CPUやOSの事実上の価格を、敵対的業者に対して吊り上げた疑いをもたれていることは周知の通り
企業は皆 Microsoft ではないですよ。(笑) 一緒にしないで下さい。(爆笑)
あまりにも特徴的な文面なので 引用しました。
なるほど、Microsoftは特殊な企業だから、例外扱いにしろとの事ですね。
私は企業というのは基本的に利潤を追求する団体なので、法的に許されていることは、利潤を 追求する為には、どんなことでもやる危険があると考えています。また、それを一概に悪と みなすことは出来ないと思いますし、それは、むしろ危険な考え方です。 それは法の不備を、まず第一に責めるべきであり、企業自身を責めるのは、その後のことです。
たとえば、「プロパテントウォーズ」には、GE社の電球に対する特許の不正トラスト (GE社の契約条件に従わない企業を世界市場から特許の独占権で排除)*1に関する事例が紹介されています。
それでも、あなたはこういう独占による不当な権力行使をMicrosoftだけの特殊事情だと みなすことが出来るのでしょうか? また、そう信じうる根拠はどこにあるのでしょうか?
*1 後に独占禁止法で有罪判決を受けたが、時既に遅し。日本企業は販売禁止令を出されて既に全滅
とりあえず、いろいろ考えていることもあるんですが、まとまったら書きます。
独占禁止法の独占と特許法の独占の 違いですが、独占禁止法については、私は勉強不足で、詳しくは間違っているかもしれませんが、 両者は厳密には違うものです。独占禁止法は、市場を実際に独占している企業に対しての制限を 定めたものですが、特許法の独占排他権は、市場への独占的なアクセスに対する権利の事です。 ですから、両者に直接の関係はありませんが、当然間接的に関係は出てきます。つまり、 特許による独占排他権によって、実際に市場を独占した場合、独占禁止法の適用を受ける可能性が 出てくると思います。
「特許の文明史」、「プロパテント・ウォーズ」を読んでしみじみ思うんですが、 どうして特許の歴史ってこうも暗いんでしょうね。;_; もうちょっと、発明がバリバリ行われて、 生活が便利になって、特許ってなんてすばらしいんでしょう、というような、明るいものを想像 していたんですが。あにはからんや。;_;
むしろ、他人から権利をいかにして剥奪するかとか、隠すとか、発明の横取りだとか、 権利を必死になって、あの手この手で防衛するだとか、そんな事例ばっかり。専売条例の元となった、 ダーシー・トランプ事件なんて、ただの賄賂事件の禁止ってカウンターアクションの結果って だけだよなぁ、とかいう感じですよ。つまり、ほとんど、どろどろの政治の世界。特許は、 「創造と略奪の歴史」と前掲書にはあるけど、否定しがたいものがある。
U.S.の特許の歴史はちょっと明るいかもしれない。しかし、電球の発明さえも、 発明をすることと、特許をとることは、別問題であったという感じがしますし...。
「ソフトウェアの著作権・特許権」も、ソフトウェア特許の黎明期の説明がある本 なんですが、これも暗いんだわ。;_; ソフトウェア研究者の端くれとして、 読んでて悲しくなる話が多いんですわ。
「必要悪だから、いかにしてこれに対処するべきか(tactics/vision)」という議論と、 「本来どうあるべきか、また、どういうスタンスで望むべきか(strategy/mission)」の話は 分けて考えた方が良いだろうと、強く考えるようになりました。