オヤバラチン4

皆さん、小学校の思い出って何がありますか？ 大好きだった先生、いたずらしてしかられたこと、楽しかった夏休み。 今思えばどの思い出も、くだらないながらも楽しい思い出だと思います。 しかしここに、小学校の頃からもう私達の理解を超える生活を送っていたアウトローのエリートがいます。 はい、悩む間もなくオヤブンの事です。

▽【オヤブンのお友達ヤマダ君。】

オヤブンはある日、お友達のヤマダ君にお家に遊びにこないかと誘われました。 さっそくお家に行ってみると、ヤマダ君のお家は何と2段ベットの１階だったそうです。 え？意味が分からない？じゃあもう一度いいますね。

ヤマダ君のお家は何と2段ベットの１階だったそうです。 オヤブンの住んでいた町には、当時で1泊500円という宿があったそうです。 その宿の中身は、狭い部屋に詰めるだけ2段ベットが入れてあって、そこの上下どちらか１つを宿代わりにするそうです。 ヤマダ君はお父さんと2人暮らし。その宿の、ある2段ベットの下の段を家代わりにしていたそうです。 カーテンをひくと1升瓶片手に既にゴキゲンのお父さん。

「おう、いらっしゃい。」

お父さんと向かい合うと、もう顔と顔が50cmもなかったそうです。 そんな所へ、なぜわざわざヤマダ君がオヤブンをご招待したかというと、

「おう、ヒデちゃん（オヤブンの名前）これ見てみぃ。」

見せられたのは、上の段に住むシャブ中のおっちゃん秘蔵のエロ本。

「おお、すげえ！！」

「どれどれ、わしにも見せてみい。」

3人で2段ベットの下段で1列に並んで見ていると、

「だれじゃ！！俺のエロ本もってったんはっっ！！」

上のオヤジが気が付いて騒ぎ出しました。

「じゃかあしいわボケッッ！！静かにせえっっ！！」

お父さん、一升瓶で上の段を下からゴンゴンつついて黙らせます。 お父さんが弱くなったと聞く現代、まったく夢のような頼もしさです。

後日オヤブンは又ヤマダ君からご招待を受けました。

「ヒデちゃん、今日遊びに来いや。俺の部屋ができてん！！」

さっそく遊びに行くと、先日行った2段ベットの上の段だったそうです。 下の段では相変わらずお父さんがおいしそうにお酒を飲んでいます。

「昨日の夜、あのシャブ中のおっちゃんイッテもうてん。」

ニコニコ嬉しそうに微笑むヤマダ君の手には、おっちゃんの遺品でもある秘蔵のエロ本が数冊あったそうです。

▽【オヤブン家出する】

夏休みに入ったある日、オヤブンは公園でお昼のパンを食べていました。

ウ・・ウウウ〜・・・

変な声がします。

ふと隣りを見ると、おっちゃんがカッターで

自分の首を、横からギコギコと切っていたそうです。

『趣味：リストカット』 などと自己紹介に書く刹那主義ホームページもびっくりです。

「ほんまムカツクで。血がズボンに付いたからあわててジャングルジムに登ってパン食べとってん。公園では高い所に登るが基本やってんけど、忘れとってん。」

「・・・なんで高い所にが基本なの？」

「どっからねらわれてもスグ分かるやん。上から蹴った方が有利やし、ソッコー逃げれるしな。」

オヤブン豆知識でした。 しかし血を付けたズボンをお母さんに怒られてしまい、オヤブンソッコー家出。

その頃ちょうどクラスでは

【 家出 → 野宿 】が爆発的ブームでした。

今みたいにポケモンカードがあったとしても、

絶対ここでははやらなかったでしょう。

さっそくブームに敏感な時代の先駆者達が野宿している所で仲間に加わったそうです。 私達子供の頃の家出とは、夜になったら迎えに来てくれるお母さんに照れながらも帰ったものですが、 オヤブン達は誰かが入れ替わり立ち代わり家出していたので、学校の課題の星の観察なみの気軽さで参加していたそうです。

「俺も4,5日はそこにいたな。」

「・・・ゴハンとかどうするの？」

「へ？そんなん近所の子供好きのおばちゃん家とかでお世話になんねん。」

「・・・そんな・・・」

「だって俺、そんな調子でいつも人の家で食べてたから、3才からずっと外食やで。」

3才から外食する子供・・・近所付き合いのない都会では信じられないほほえましい話です。（でもイヤですが。）

▽【オヤブン vs 熱血先生】

ある日の授業中、窓際の席のオヤブンは外を眺めていたそうです。 外では浮浪者のおっちゃんたちが、いろんな物に火を付けてたき火をしていたそうです。

そのうち明らかに薬でラリってるとおぼしきおっちゃんが、火にあたりすぎて洋服に着火していました。

しかし誰も助ける様子もなく、それどころかその燃えるおっちゃんの火にまであたろうとする浮浪者が出てくる始末。

メラメラ燃えはじめるおっちゃんをみて大笑いのオヤブン（ひどすぎる）。

それをみて新任の熱血先生が、オヤブンを注意しました。

「せやけど先生あれ見てみ。スゴイ事になってんで。」

「何がや・・・わあっっ！！！！」

窓の外を見た熱血先生、あわててバケツに水を汲んで消火活動です。 火は無事消えたのですが、火にあたっていた他の浮浪者のおっちゃんたちに、

「なんで火消すねんっっ！！俺達殺す気かっっ！！！」

と、ボコボコになぐられていたそうです。 それを見てオヤブン達また大爆笑。3階の窓から楽しく見学していたそうです。

「先生この街の人間とちゃうかってん。しゃーから慌ててんな。あほやろ、あーゆーのはほっとくのが一番やのに。先生次の日お休みしてたわ。」

燃える人間をほっとく・・・マジでっっ？！

今でもおやぶんは、居酒屋などでけんかが始まるとニコニコ見学しながら、

「ほっとくのが一番一番。」

といっています。

小学生の頃、写生の時間に近所の神社へ3日連続で行く事になりました。 3日間たっぷり外で遊んだ私は、先生がまわってくると書いているふりをし、あらかじめ美術室に忍び込んで頂いておいた卒業生の絵を、何食わぬ顔で提出しました。 もちろん絵の具の渇き具合等であっさりばれて大目玉を食らったのですが、ずっと我ながら恥じていました。 オヤブンの話を聞いて、自分のヌルさに少し安心しました。 今となっては良い思いでです。