ケースその１：加賀屋くん【後編】

ハウス加賀屋似の妖怪に目を付けられてしまったワタクシ。

その後も彼は私に熱視線を送りつづけ、墓場の運動会へいざなう勢いです。

決して悪役妖怪じゃないんだけど、なんか知らず知らずのうちに人に迷惑かけちゃうタイプのお騒がせ妖怪。

最後は鬼太郎に頭髪でチクチクやられて、目玉オヤジに諭されてションボリパターンです。

しかし、初日にうちの会社の担当者がカジュアル気分で苦情を入れてくれたため、その後加賀屋君は社内では話し掛けてこないようになりました。

話し掛けられないと気になっちゃう。押して押して引くが恋の駆け引き。

そんな感じで私のハートは盗まれるはずもなく、日々彼と目を合わせないよう勤めてまいりました。

加賀谷君と知り合って1週間近くたった週末。

私は軽く【ソリティア→残業→時給割増】という初級段階の攻撃技を繰り出し、8時ごろ会社を出ました。

2時間ほど残業していたようです。

会社を出て人ごみの中携帯をチェックしながら歩いていたのですが、右側前方にチラチラ映る人が見えるのです。

携帯メールを打ちながらだったので、立ち止まったりのろのろ歩いたりしていたのですが、

その人影だけが常に視界の右上に入るのです。ハテ。

ふと目線を上げるとそこには、ものすごい横目でこちらを伺いながらつかず離れずで歩く加賀谷君が。

ちなみに加賀谷君の会社とウチの会社は時間にして1時間近く離れている。

そして、加賀谷君が担当する会社はここら辺の地域ではウチだけで、今日は用事は無いはずでした。

ひょっとして偶然かもしれないので、電話をかけるふりをしたりして立ち止まったりしましたが、やつもしっかり立ち止まります。

やべー・・・。

もうね、必死で携帯かけるふりしましたよ。やめたら最後話し掛けられます。

私はあの妖怪を納める呪文を何一つ持ってないんですよ。

私はあえてローカルな駅のほうへ向かい、切符を購入しました。加賀谷君も購入します。

のろのろ改札口へ向かいます。加賀谷君一足先に改札をとおり、立ち止まってすごい横目でこちらを伺ってます。

加賀谷君が改札を通ったのを確認した瞬間、きびすを返して反対方向へ向かいました。

一瞬焦って改札を出ようとしてピコンピコンならしている加賀谷君を確認しました。

そのあと近くの駅ビルの入り口に隠れていましたが、加賀谷君がキョロキョロしながら走り去っていきます。

こえーっつーの・・・。

心細くなった私はお母さんにお電話です。おかーちゃまー。

「かくかくしかじかで、今妖怪に追いかけられてるの。」

「んっまー！！！大変！！気をつけなさいよ！！その子いくつくらいなの？」

「ユウスケ（弟）より若いよ。」

「んっまー！！ユウちゃんより若くて、一生懸命働いているのね。けなげね。」

「いや、だれでも働くし。」

「あなたもう大人なんだから、自意識過剰に騒ぎ立てて未来ある男の子をツブシちゃだめよ！！」

「えっっ？！！」

「大丈夫。トモ強いでしょ。がんばってね。」

「えっっえっっ？！！」

「あ！お客さんだからきるからね！　いらっしゃいませー・・」　{{font_size('ブチッ。ツー・・ッツー・・','-1')}}Hiki::PluginException (not plugin method): inline plugin

お母さん。トモ、いらない子だったのですか？トモにはもう将来はないのですか？

そうこうしているまに、目の前を加賀谷君3度目の横切りです。キョロキョロしています。

この世に1人のような孤独感に押しつぶされそうになりながらも、コーちゃんにお電話です。もちもーち。

「ぎゃはははははははは！！！君はアレだな。ホント、その手のヤツに強いな！！！」

「笑い事じゃねーよ。あいつマジ動きのパターン読めねーんだよっっ！！！次の行動が予想つかねーんだよっっ！！」

「いやいやいやいや、ほんと、貴重な人だから。逃がすなよ。そんなおいしいヤツ、逃がすなよ！！」

「貴様・・・・」

「あ！ボクいまから飲み会だから。じゃーねー。」　{{font_size('ブチッ。ツー・・ッツー・・','-1')}}Hiki::PluginException (not plugin method): inline plugin

・・・・・この世に頼るものはいない・・・。自分の身は自分で守らねば・・・・・。

グッタリしているところに、ターバンを頭に巻いた異国の人が・・・・

「アノネー！ノド乾イタネー！！！ナニノモウ？！！」

・・・・・知るか・・・。