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!伝説殺しの町。

今朝の通勤中、隣のオッサンが難しい顔をしながら物騒でいかがわしい雑誌を読んでおりました。

ふと見るとあるヤクザの名前が。

そのヤクザの存在を教えてくれたのは親分。そして・・・。

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オヤブンと知り合った頃、私はそのヤクザを知りませんでした。

何かでその人の名前が出てきて、私が知らないと言うとオヤブンがものすごく驚いていたのを覚えています。

「えー、お前あの伝説のヤクザ知らんの？有名やのに。

そのヤクザはな、小さい組におったんやけどな、山口組が大阪に勢力を拡大する時に抗争でオヤブンが殺されたんや。

その敵を討つために、たった一人で山口組のオヤブンが飲んでる店に乗り込み、狙撃しよったんやぞ。

殺すことはでけへんかったんやけどな。

そのあと壮絶なリンチにあって、人間とは思えない形で山中に捨てられとったんや。

チンポも切られて爪もはがされて殺されて。身元もわからんぐらいになって。

ただ、見事な天女の刺青と、足の裏に彫っとった女の名前が決め手になって分かったんや。

足の裏に彫られてた刺青はそいつがこっぴどく裏切られた女で、一生踏んづけたるゆうて彫ったもんやった。

今でもたった一人で山口組に刃向かったちゅうて伝説やで。本も出とるしモデルにしたビデオもある。

ちょっとは歴史勉強しろ。」

えー。中高大と女子高の私がそんな世界知るはずも無く、オヤブン常識歴史は無視しましたが。

そのヤクザの名前を又聞く機会がありました。ジローちゃんからです。

ジローちゃんとは何を隠そうオヤブンのお兄ちゃまで、3人兄弟のまん中ゆえのジロー。

しかし長男はイチロウではなく、オヤブンもサブロウではなかった。ジローちゃんだけジロー。

そんな不公平をこっそりぼやきながらも、それでもジローちゃんはいつも優しく微笑んでおりました。

それだけではございません。ジローちゃんはオヤブンの血縁関係者とは思えない優秀ぶり。

高校を首席で卒業。自力で大学まで進み大手広告代理店へ。

ちなみに長男さんも大変優秀で、今は大手企業の幹部となられました。

なぜにオヤブンだけ。チンピラ。

学歴だけでなく、ジローちゃんは大変人間が出来ていて、温和で謙虚でしかも頭も切れる。しかしなぜかおっとり。ギターがめっぽううまく、面倒見もよい。

いまだに某大手企業（ちょっと黒い噂が耐えない）の幹部となった幼馴染が、ジローだけにはかなわないと慕ってくるほどでした。

そんなジローちゃんはそのヤクザと同じ中学で後輩だったそうです。

争いを好まず草食動物のようだったジローちゃんと、若い頃から血で血を洗うすさんだ生活をしていたその先輩だったヤクザ。

今でも覚えているエピソードがあるそうです。

その日、若かりし中学生だった頃のジローちゃん。

友達の家からの帰り道を、自転車をぎっちらこっちらこぎながら家路へと急いでおりました。

「おーい。ジローやんけ。」

呼び止めてきたのはその件の先輩。

喧嘩上等な先輩でしたが意味の無いいじめはしない、男気がある人だったためジローちゃんもなついていたそうです。

「あ〜センパ〜イ。こんにちは〜。」

「お前ちょっと俺乗せてけ。」

有無を言わさず後ろに乗り込む先輩。言われるままに自転車を走らすジローちゃん。

どこへ向かうのかは聞けなかったそうです。後ろにいる先輩の、異様な妖気がジローちゃんを黙らせたのです。

先輩はなんだかものすごくご立腹のようでしたが、努めてなんでもないような顔をされていたそうです。

自転車はとある民家の前にたどり着きました。

「おうジロー。すぐすむわ。ちょっと待っとれ。」

先輩の命令とはいつの時代どの場所でも絶対です。

先輩が家の中に入ってすぐに、ものすごい物音と人の争う声が聞こえました。

どきどきしながら待つジローちゃん。

15分もしないうちに先輩が悠々と出てきました。

汗で全身から湯気が出ている状態でしたが、先輩サッパリした顔をしています。

そして返り血で真っ赤です。

「おう、待たせたなジロー。ワシの家まで行ったってくれ。」

無我夢中でこぐジローちゃん。鼻歌を歌ってご機嫌の先輩。

後日先輩が少年院に入れられたと言う噂を聞きました。ここから既にその先輩のヤクザ人生が始まっていたのです。

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テレビにオヤブンと同じ出身地の元ボクサーが映ります。

若い頃はものすごいワルで、ボクシングをやってなかったら手が付けられなかったとか言ってます。

それを見てジローちゃんが温厚な笑みを漏らします。

「嘘や嘘や。この子はものすごく優しくてエエ子やったで。

○○（オヤブンの名前）達の学校でな。いつも闘犬みたいに他の高校の強い奴等と戦わせられとったわ。

ボクシングやって強かったから、○○達は大分儲けさせてもろたんとちゃうか。

俺も○○とかと一緒にこのボクサーの家の屋根に登ってな、隣の銭湯の女風呂よう覗いとったわ。

あっこのオカン怖いからな。よう降りろーってどなられんねん。

そのたびにこのボクサー、先輩、堪忍してください！！って涙目やったわ。ハハハハハ。」

どんなやんちゃも、どんなヤクザも優しく包み込んでしまうあの町。

あの町はオヤブンやジローちゃんにとって、おぞましくも愛しい町。

そんな町に5年程前、某お茶のCMで売れっ子になったモデルMさんを連れて行きました。

オヤブンと私とシゲさんとそのMさんで、大阪名物串カツ屋へ入りました。

「あかんあかんあかんMちゃん！串カツ2度付け禁止って書いてあるやろ。一回かじってもうたんはソースにつけたらあかんねん。」

「あ！ごめんなさい！！付けちゃいました！！」

近くにいたオッサンA：　「どれやどれやどれや！！おねえちゃんの唾液が混じったソースは！！！」

近くにいたオッサンB：　「どけどけどけ！！！そのソース舐めさせろ！！！」

近くにいたオッサンC：　「わわわわわわワシのチンポそこに入れさせろー！！！」

・・・まじでベルト外しかけてました。

店員につまみ出されてましたが、Mちゃんは怖がってもう串カツを口にしませんでした。

私は串カツ1本60円という値段に、これ何の肉かなとぼんやり考えてました。

「あのおっちゃんのチンポ、確かに串カツサイズやったな。一口サイズや！！」

下品に笑うオヤブンを見ても、食欲のなくならなかった私はこの町に馴染んできてしまっているのでしょうか。

それだけは堪忍してくれ・・・・。

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