��ʥ�� - ChinaWiki - - ケースその１：加賀屋くん【前編】 Diff

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私が今の会社に派遣されて間もない頃、彼と運命の出会いを果たしました。

会社にはしょっちゅう協力会社の方々の出入りがあったのですが、そのなかの1人が加賀谷君でした。

仕事をしていた私は、誰かに見られているという視線に顔を上げたのです。

あのね、ホント、じっとみられると本当に人間て気がつくものなんですよね。

顔を上げた私の目の前に彼が立っていたのです。

黒目がちの潤んだ瞳。自己主張も個性も無い短く刈られたヘアースタイル。

気のせいかブカブカ？スーツを頼りげなく着こなす彼。

目が合った瞬間、彼は今まで話していたウチの会社の担当社を押しのけ、私の元に文字通り駆け寄ってきました。

「こっこっ今度っっ、○○㈱に入社いたいたしました、○○ですっっ！！宜しくお願い致しますっっ！！！」

そのどもりっぷりはハウス加賀屋を髣髴とさせ、その大声はフロア中に響き渡りました。

入社したての私は周りからえらい注目を浴びてしまい、愛想笑いをした後目をあわさないように仕事を続行しました。

なんだ・・・。なんなんだあの妖怪は・・・。

私の中の妖怪アンテナが容赦なく立ちまくっています。ビンビンです。

私はまだなれぬ仕事に没頭する事で、恐怖と戦っていました。

5分後・・・。

「こっこっ今度っっ、○○㈱に入社いたいたしました、○○ですっっ！！宜しくお願い致しますっっ！！！」

・・・いや知ってるし・・・。

またもや皆から注目を浴びてしまいました。

「めっ名刺をっっ！！！ドウゾッッ！！！ドウゾッッ！！！」

・・・いやいらんし・・・。

そんな事言えるわけのない純情な私は震える手でその名刺を受け取り、また愛想笑いをした後目をあわさないように仕事に没頭しました。

熱視線。

皆様、それ本当にあるんですよ。

私の左頬あたりが、何だか熱くてビリビリします。ほんとビリビリなの。

でね、そっと左側見ると、加賀屋君がもう呪うような熱い目でこっち見てるんですよ。

本当なの！！本当！！！！

コエーーーーッッ！！！！！

お母さん。社会で働くと言う事は、お給料をもらうと言う事は、こんなにもつらいことだったのですね。

トモ、初めてしりました。

その後私はもう邪念、いや妖怪の邪気を吹き飛ばすように仕事をしていたんですよ。

そしたらね、SEの方がいらして、私のパソコンをLAN設定するっておっしゃるんですよ。

数分私は席を明渡さなくちゃいけなくてね。

まあトイレにでも行くかと思って立ち上がったときに再び熱視線。

はるか彼方遠方から、加賀谷君がこっちに向かって走ってくるんですよ。

ギャーーーーーーーー！！！！！

私ダッシュでトイレに駆け込みましたよ。

ウチのトイレってね、めちゃくちゃ綺麗なんですよ。私便器に座って落ち着いて自分に今起こってること考えてたんですよ。

ちょっと待てよ。コレ、私の自意識過剰なんじゃない？やべ。かっこわりー。

そこまで落ち着いて考えられるようになったんですけどね、落ち着きすぎてそのまま寝ちゃったんですよ。

飛び起きたら20分以上経過。

ヤバイでしょコレやばいっしょ。入社したてでやばいっしょ。

私ね、トイレ飛び出したんですよ。

ガツーーーーーンッッッ！！！

歯になんかすごい衝撃が来てね、なんか、衝撃強すぎて痛いとか言うより目の前真っ白になって見えなくなりましたよ。マジで。

ゆっくり視界が戻ってきたときにね、目の前に加賀谷君が立っているって分かったんですよ。

ほら、あるじゃないですか怖い話とかに。

トイレに逃げ込んで、足音がするんだけどじっと隠れてたら足音が遠のいて。

でも怖いから隠れてるうちに寝ちゃって、ああ、もう朝だから大丈夫だとか思いながらふと上を見ると幽霊が覗いてたってヤツ。

アレに近い恐怖が私を襲いましたよ。

加賀谷君。満面の笑顔。

「あのっっあのっっ！！コッコレ！！ドウゾドウゾ！！！」

差し出されていたのは缶コーヒー。コレだ。コレが前歯に直撃したんだ。

落ち着いてきたらだんだん前歯と唇がジンジンしてきましたよ・・・つか・・血が出てるんですけど・・・？

「あのっっあのっっ！！寒そうだからホットにしましたっっ！！のっっ飲んでクダクダサイッッッ！！！」

・・・くだくださいて・・・妖怪用語？

差し出されたコーヒーは既にぬるく、トイレの前20分待ちの事実を物語っていました。

あまりの痛さにうめき声が出かけます。つか、しゃべれないんだけど・・・。

「・・・・・っう・・・・」

「いっイヤイヤッッ！！！そんなそんなッッッ！！いいんですっぜんぜん大丈夫ですッッ！！飲んでくださいッッ！！！」

・・・大丈夫じゃねえよ・・・。

そんな私にお構いなしに、加賀谷君は缶コーヒーを私に押し付けて走り去って行きました。

どこの乙女だ。あれ。

その後席に戻った後も加賀谷君はこちらを見つめっぱなし。

さすがにウチの会社の担当者がその尋常でないムードを察して、以後加賀谷君をチェックしてくれたので助かりましたが、

やはり帰る間際駆け寄ってきて、挨拶を大声でされました。

「おっっお邪魔しましたっっ！！！又来ますっっ！！またっっまたっっ！！あっっ明日来ますっっ！！！」

・・・いや聞いてないし・・・。

「・・・○○君（加賀谷君）、明日来る用事ないじゃないの。」（ウチの会社の担当者）

「あっっっ！！！じゃあっっじゃあ今週中にっっまた来ますッッ！！！」

「今日木曜日だよ？」

「あっっっ！！！じゃあじゃああっっやっぱり明日来ますっっ！！！」

そういい残して、加賀谷君は恐ろしいイキオイでぺこぺこしながら走り去って行きました。

新人が勝手にスケジュール作っていいのでしょうか。

不安になりましたが、さすがに斬新な加賀谷君の態度に見かねて、会社の人が加賀谷君の上司に軽く苦情を言っていました。

ひとまず安心です。

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