チナウ


2003-08-14 (木) 信じるも自由。信じないも自由。

何かを手に入れようとしてもがいたバカンス。切り取られた時間。



私が23の頃、31歳の男性とお付き合いしておりました。

厳密に言うと、私は2番目だったかもしれません。彼には2年付き合った自他ともにヨメちゃんとよぶ彼女がおりました。

それでも私は彼が欲しくて欲しくてしかたがありません。

その頃の私は彼がとても大人の男性に見えて、彼の見せてくれる世界が全て新鮮に見えました。

しかし大変忙しい人で、何とか週一のデートをキープするというお付き合いが半年ほど続きました。

そして迎えたお盆休み。

7月の終りに夏休をとるので、1泊で温泉にでも行こうという事になりました。

初めての旅行。

嬉しくて嬉しくて、たった1泊なのに準備した荷物は多すぎて、何度も荷物を作り直してはやっぱり多くて最初からやり直すを繰り返したほどです。

今思えば2人旅なのに、なぜオセロとトランプが必要だったのか。わざわざパジャマを買い、下着も買い。

旅行当日。彼仕事が片付かず。

もうね、怒りとかそんなんじゃなくて、悲しくて悲しくて。真剣神様を恨みました。

でも荷物まで作って気持ちが治まらず、私は一足先に行く事を決意。

新幹線1人で乗って温泉に行くなんてもちろん初めてです。

その頃の私はお酒もあまり飲みませんでしたから、新幹線の中が退屈でしかたありませんでした。

でももうね、意地になってたの。

ローカル線に乗り換えて、目的地に着いたのはもう夕方。

彼があらかじめ宿に連絡してくれていたので、お迎えが来ていました。

ついたお部屋はなんと露天風呂付き。

一瞬の感激は、1人という事実があっというまに悲しい気持ちへと変えてゆき、私はその場に座り込んで泣きそうになりました。

こんなステキな部屋。どうして1人なんだろうと。

1人ではステキな趣のある部屋も、ただただオバケが出そうで恐怖の対象でしかありません。

それでも彼を待ちつづけていたのですが、夕食にも間に合いませんでした。

仲居さんがお部屋に料理を運んできます。

豪華な献立を前に、私ますますションボリです。

ションボリもそもそと夕食を食べる私に、仲居さんが励ますように運んできたもの。

刺身の船盛り。

彼がお詫びに電話で頼んでくれていたものなのですが。船盛りて。1人で船盛りて。

しかもまだ魚がビチビチいってましたよ。

どうしろというの。

お刺身って1人で食べるとどうしてちっともおいしくないんだろう。

箸が進まない船盛りを前に、飲みなれない日本酒をのみ、私はいつのまにか寝てしまいました。



額にひんやりとした感触で目が覚めました。

どれくらい眠っていたのでしょう。

彼がネクタイを緩めながら笑っています。

私の額には白身魚の刺身が2切れへばりついてます。

ぼんやりする私を見てゲラゲラ笑いながら、女体盛り女体盛りとか言ってます。

私は必死に彼に抱きつきましたが、髪には彼が刺したであろうエビのしっぽが付いていました。

なんだか生臭いし、でもやっと彼が来てくれたし。

私は泣きながら彼にしがみつきました。

彼は私の頭をグリグリしたあと、私を連れてデッキについている露天風呂に入りました。

残念ながら曇っていて星も月も見えなかったけど、おかげで私たちはお互いを見つめる事に専念する事が出来ました。

その後彼は無理やりもぎ取った2日の休み分、続けて旅館に連箔してくれました。

何度も露天風呂にはいる私のそばで、本好きだった彼はゆっくり本を読み。

じっと見つめているとたまに本から私のほうに目を向けてくれるのです。

そのたびに私は彼の眼鏡をずらし、キスをし、彼までびしゃびしゃにしてしまうのです。

月の出ない夜空を神様はいないのかと恨めしげに眺めつづける私に、神様なんていないんだよと彼は静かに言いました。

遠い昔。身分という言葉が無かった頃。力が絶対だった頃。

力の強いものが動物を狩り、広い土地を所有した。

生まれもって力の弱かった、でも賢かった誰かが言い出した。

自分たちの境遇が悪いのは、生まれもって弱い体のせいだ。運が悪かった。

そうやって見えない何かを恨む事で自分の心と折り合いをつけていた。

強いものの作物が枯れる、怒りの矛先を変えるために誰かが言う。

風が悪い、晴れない太陽が悪い。

そのうちソレを利用するものが出てくる。

弱い力をかばうために、強いものにたてつく時、自分がそうしたいんじゃない、きっと風がそう言ってるんだ。風の意思が、神が言っている。

そうやって人の弱い心、知恵が神様を生んだんだ。

そういう彼を見つめながら、私のこの気持ちは一体誰が仕向けたのか考えた。

彼女のいる人を好きになったのは、彼女自身の存在が私を狂わせたんじゃないのか。

彼女も私も愛する彼の態度が私を狂わせたんじゃないのか。

押さえようの無い気持ちを誰かのせいに出来る筈もなく、私はまた彼の膝に手を乗せ唇を寄せる。

感触とぬくもりだけが本物で、心とかそんな見えないものは全てわずらわしいものでしかなかった。





あれから10年近く経ち、私はあのときの彼の年を追い越しました。

でも私の中で想い出の彼はずっと年上のままです。

その後クールな彼に若かった私はもっとかまってほしくてワガママを言い、彼の忙しさはますます加速し。

ついには強がって連絡を絶ってしまいました。

噂で彼は今名古屋へいると聞きました。

そして私は東京へと移り住み、おそらく永住の土地になるだろうという予感がしつつあります。

大阪も東京も私にとって、楽しい時間も悲しい時間も全てが混在する町で。

そんな日々の中、あの日彼といった温泉は、それら全ての時間から切り取られた場所でした。

あの日の彼の、薄情そうな薄い唇や困ったような笑顔や月の見えなかった夜空や。

何もしなかった時間。ただ好きで好きと言う気持ちだけで溢れていた時間。

人生という流れつづける時間の河の中に出来た小さな小さな中州。

今はそれすらも流され沈んでしまいましたが、確かに存在した一瞬の楽園でした。

ねえ、彼は私の事本当に好きだったのでしょうか。

ねえ、私は彼の事本当に好きだったのでしょうか。

好きだったらどんなに忙しくても、少しでも時間を見つけて会いたいはず。

そんな私の稚拙な思い込みは今でも変わらず、彼はそんな私に疲れ去って行きました。

幼かった私は、言葉や一緒に過ごした時間や、そんなものでしか愛情を計る事が出来ず、

今となってはデーター不足のまま終了してしまった恋でした。

見えない何かを確かなものにするために、私は私の中の何かと戦い、敗れたのです。

それは結果としてよかったのか悪かったのか知るよしもありませんが、

今も私は破れたり泣いたりしながら戦いつづけています。

私の中の、言葉では説明できない気持ちが求めているのです。

そんな見えないこの気持ちを、最初に恋だ愛だと名づけたのは一体誰なのでしょうか。

名前を付けることによって、見えるものにしようとしたのは一体誰なのでしょうか。



ねえ、おしえて。



おしえて下さい。





神様。





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# (・ε・) [(;´Д`)    (・ε・)アミーゴ分かってくれたんだね・・・]

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# (・ε・) [まん*ちゃんバツグンにエロイて。]

# (・e・) [そのまえにその名前どうにかしろ。]

# まん*ちゃん [個室に加えて、さらにわかめ酒までっ。エロい。エロすぎる。。。ついでに吹き矢ショーもお願いします。]

# (・ε・) [誰か警察呼んでーっっ!!変態オヤジが逃げ出してるぜー!!]

# (・e・) [エレガントチナウへ迷い込んだもようです。ここは花園チム。]

# 6-30 [ウィルス対策終えて、チナウ3回読み返した。エロじゃなくて、トモ吉様念願のエレガントだねー。個室露天風呂に女体盛り。温..]

# (・ε・) [ウィルス対策ご苦労様。]

# (・e・) [うちは大丈夫っぽい。のか?]


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