チナウ


2008-05-18 (日) 尊敬と言う言葉でオブラードした。 [長年日記]

畏怖。いや、ナニしでかしてくれてんねん、的な。

なんでもかんでも手作りしてしまうマイファーザーヤスマサ。

そんなダディに今回本棚を発注してみました。

私が個人的に発注を行うのは竹馬を作ってもらった実に小学校以来。

そもそも竹馬も作ってもらうつもりなんてこれっぽっちも無く、

青く鈴の入ったシャラシャラしたやつをチャラチャラ乗り回したかったのに、

何を思ってかヤスマサは立派な竹で作りよりまして、

私が内気な性格だったら確実にイージメーにつながる代物でしたが、

その後何とか人気物件となり竹が割れて自然に帰る日まで楽しく過ごさせていただきました。

今回大阪への引越しにあたり最後まで片付かなかったのが本。

前の家ではキッチンに本棚かわりにちょうどいいストック棚があったので重宝していたのですが、

今回はそんなものはなく、買うとなると難しい。それが本棚。

本というやつは二列に並べて入れるとどうしても奥のほうの本が見にくい。

かといって本屋のように1列にすると安定が悪いのかそんなものは売ってなく、

結局据付にされているご家庭も多いことかと思います。

そんなわけでヤスマサへ発注。自分の思い通りの本棚を作らせるのです。

年寄りに生きがいを与え、その上本人も考えて手先を動かすことによってボケ防止。

さらに思い通りの本棚が安く手に入りそうで私ニッコリ。すべてに優しい本棚です。

いいことずくめの上今度は嫁入り道具という言葉を流布し材料費まで出させる作戦です。

上手く作れた暁には、裏にヤスマサのサイン掘り込んでもええよと器のでかいところを見せましたが、

それならお父さんの骨壷収納できる所作らせてやれと、母ヨシコがビックリな要求をしてきたので瞬殺NGをきってやりました。

そんでほくほくしてたら問題勃発。

本棚につける取っ手をめぐって、ヨシコとヤスマサがバトルを繰り広げているらしいです。

ヤスマサはお気に入りの松の木を削って取っ手にしようとせっせと磨き始めたらしいのですが、

ヨシコは既製品の取っ手をつけたほうが綺麗だし使いやすいと主張。

自分をシカトしながら松の木をジョリジョリ磨くヤスマサに痺れを切らしたヨシコが電話をしてきました。

どっちにするか選べだそうです。ヤダめんどくせー。

どっちを選んでもいいのよ、でもお父さんに気を使わなくていいのよ、既製品のほうが綺麗で使いやすいのよ、お父さんは自分の趣味を押し付けすぎなのよ、その木でいいならそれはあなたたちの自由だけど、でも遠慮せずいやなら断っていいのよ、いやそれが気に入ったのであればお母さんは何も言わないんだけど、でもそんな趣味に走った木のほうを選ばれたらまたお母さんお父さんに何も分かってない的に馬鹿にされちゃうし、でも好きなほう選んでいいのよ・・・

どないせぇっちゅーねん。

結局実物を見てみないことにはと休みの日に彼と一緒に散歩がてら店に。

新しい家は幸か不幸か両親が営む化粧品店から歩いて10分の所。トホホ。

私たちの顔を見るなりヨシコは「我が家のチベット中国論争よ!」と不謹慎にも程がある発言をポロリと口走るほどのヒートアップぶり。

店の裏にある隠れ家のようなヤスマサの工房(倉庫)へ向う足取りもぐっと重みを増し、彼と君が先に行ってよいやあなたこそ先にと押し合いながら扉を開ければ、クーラー の効かない部屋で汗だくで作業するヤスマサが。

こーとーわーりーにーくーいー。

「おう、来たか!」

きらりと汗を光らせ手に握るは件の木の取っ手。

こーとーわーりーにーくーいー。

投げてよこされた松ノ木は、赤子の頭ほどの大きさ。エエエーーーームリムリーーーー!!(断わっとるがな)

思わず即お断りする私にヤスマサ激怒。そっちじゃないこっちだと握らされた松の木は、綺麗に削られ箸置き程の大きさに整えられた、なかなか素敵な取っ手に仕上がってお りました。ホ。

「その大きな塊から切り取って、少しづつ丁寧に削るんや。」

ヤスマサ、プレゼン開始です。

「その木、40年ほど前にとってきたんだけどな、今でも切り出すと松のいい香りがするぞ。  ノコも折れそうなほど硬いし頑丈だし。すごくいいぞ。」

それをここまで削るのはどんなに時間がかかったことでしょう。すっかり小さくなった父が背を丸め、黙々と削る姿が浮かんでくるようです。くんくんした松は確かにすがすがしい凛とした香りを漂わせています。

つるつるに光る取っ手を持った彼がこちらに向って声を出さずに絶叫。

もちやすいようにくーびーれーてーるー!!

あわてて私も手に取ると、硬い松の取っ手は綺麗に磨かれるだけでなく、持ちやすいように砂時計のようなクビレがつけられていました。

頼んだ本箱は4つ。それにあわせてまったく同じサイズの松の取っ手が4つ。まるで器械で削ったかのように4つとも同じ角度でクビレが。

・・・ヤスマサ・・・ありがとう・・・・。

汗だくになって得意げに微笑むヤスマサ。断れるはずないじゃないですか。

「うんうん。とてもいい松の取っ手だよお父さん。ありがとう・・・(ちょっと泣きそう)どこで拾ってきたの?」

「拾ったんじゃなくて引っこ抜いた。」

「・・・え?!」

「昔寮の庭が殺風景だったから、山から小ぶりな松引っこ抜いてきて植えた。」

「!!!!!」

「そのときの余り。まだ塊あるぞ。何十年も掛けて今はいい感じにその松の破片が乾いて育って俺の宝物!」

「・・・・宝物て・・・引っこ抜いたりしていいの?!」

「だめじゃないかな。あそこ国立公園だし。」

!!!!!!!!

どうぞ既製品のほうを付けてくださいとあわてて言うも、もう遅い!のヤスマサの一蹴で、私たちは国立公園の松の木で出来た取っ手を選んだ共犯者とされてしまいました。

「ガハハ!時効時効!!」

最近酔っ払うと彼に羅王と呼ばれる私ですが、やはり親にはまだまだかなわないということを思い知らされた一日でした。

こわっぱこわっぱ。

※えー。本日の日記には、人間として、大人として、日本人としてどうかとおもうエピソードが含まれています。 

えー。フィクションです。フィクション。フィーックション。

(ナイフみたいに尖っては、触るものみな傷つけた時代を超え。逃げるという大人の技を身に着けました。ヤタ!)


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