チナウ


2003-08-06 (水) ボクらを乗せて青春カー。

ブーブーブー。



ユカから電話が来た。

今月半ばにあるキョウちゃんの芝居に合わせて東京遊びに行こうかな。とか。

ヤホー。最近女子会話に飢えていた私は大喜び。

行けるかどうかの決定はしばし待ての指示。

アイアイサー。



ユカとキョウちゃんと私は中学2年生からの付き合いだ。

幼稚舎から大学まで続くお嬢様学校に、何を勘違いしたのか迷い込んだ私たち。

学校のもつイメージからはちょっと脱線していたが、おおむね機嫌よく通っていた。

これに、も一つ変わり者のヤマサキが加わる。

ヤマサキだけ大学は東京の美大へ進学した。2浪した。

ユカ・キョウちゃん・私の3人は、大学の卒業旅行を他の友人たちが誘う豪華ヨーロッパ一週旅行を丁寧にお断りし、

タイ貧乏1週間の旅を選んだ。ちなみに3人とも支払いはローンで。

2年遅れで入学してまだ大学生活の残っているヤマサキも合流した。

でもキョウちゃんは実はその時点で1年留年決定で、私はこりゃ卒業に8年かかりそうだなと思った時点で大学をトンズラすることに決めていた。

ユカしか卒業してないじゃんと皆に総ツッコミを食らう。

その後ユカは大手銀行に総合職として就職、4年後に大手他銀行の彼氏と結婚。寿退社。

私は東京でチンピラ生活、キョウちゃんも東京で売れない役者。

そして2年遅れて大学を卒業したヤマサキは、卒業旅行で行ったタイに取りつかれその後単身インドへ。

お約束のバックパッカーの道を歩む。

その後行方をくらませていたが気が向いたら電話をよこし、去年、イスラエル人の彼氏とともに京都の路上で石を売っていたのが最後の目撃情報となった。

ちなみにヤマサキの家は関西では有数のアパレル会社。社長令嬢。人生って本当に分からない。



私はユカが大好きだ。

ユカは基本的に私を甘やかしてくれる。

キョウちゃんと私はお互いをしかりあう仲だが、ユカはいつも母のように私たちを許し見守ってくれる。

大学の頃キョウちゃんが髪を伸ばしたとき、長州力に似ていると私が発言したためケンカになった。

最後は「うるさいリキリキ!!」「だまれ蛇女!!」とかいう、女子大生としてはどうかと思う言い争いになったとき、

大学から知り合った友人たちはおろおろし、ユカは隣でゲラゲラ笑っていた。

キョウちゃんは次の授業で泣いていたそうだ。あいつはアホだ。

今でもその名残で、キョウちゃんが少しでも髪を伸ばすとロングヘアーといわずロン毛という。

だからいつもキョウちゃんはショート目だ。やっぱあいつはアホだ。



私はユカを尊敬している。

慶応と早稲田の両親の間に生まれ、学歴社会ではどうにも出来ない子育ての難しさを体現して見せたやんちゃなユカ。

芦屋の一等地に有名デザイナーが建築した超近代的な一軒家に住み、寒い夜には暖炉に火が入り、お姉ちゃんのグランドピアノに合わせてお父さんがトランペットを吹く。

料理教室も開けそうなキッチンでお母さんの作るビーフシチューを妹とほおばる。

そんなユカの家庭にバブルの波が直撃。

大学を辞めなくてはいけないところまで追い込まれたが、お母さんが親戚中に頭を下げて回り無事卒業。

きちんと就職し、一軒家から2Kのアパートへ家族5人移り住んだときも、グチ一つこぼさず笑っていた。

大学入学とともに新車で購入し、初日から私とドライブに出かけボコボコにしたツートンカラーのヤンキーくさいトレノ。

思い出のトレノはお父さんのアルバイト用の赤帽の幌付軽トラに変わった。

それでもユカは恥ずかしがらずそれで登校し、ボルボやベンツ、アウディに乗るお嬢様たちの度肝を抜いた。

私たちは大喜びでその荷台に飛び乗り、幌から外の世界を覗いた。

私たちは社会に出るまだ前で、呑気に口紅を引きながら荷台でキャアキャア言っていた。

多分ユカの本当の苦労を知らずに、彼女の変わらない笑顔に私たちは甘えていた。



私の人生で一番印象に残っている車は間違いなくあのボコボコのトレノ。

私がバックオーライと適当な事を言ってぶつけてへしゃげたトレノ。

お返しにユカに助手席のバックミラーをぶつけられ粉々になったガラスが私の膝に降り注いだトレノ。

扉もボコボコになってしまい開け閉めすら怪しかったトレノ。

それでもサングラスで片腕を窓から出して運転するユカは、そこらへんの男よりかっこよかった。



卒業し大手銀行に就職が決まったとき。

お父さんの借金がばれなかったといいながら、銀行の調査も甘いもんだなと皆で笑いあった。

寿退社が決定したとき、会社の上司に実は私の父は私が就職する前に事業に失敗し・・・と打ち明けたら、真っ青になってガタガタ震えだしたらしい。

だめじゃん。エリートも使い物になんないな。

そう言いながら私たちは改めて乾杯した。



いつも実家に帰ると真っ先にユカに電話する。

ユカが駅まで車で迎えにきてくれ、学生の頃から通っているバーで1杯引っ掛けてから実家へ帰るのがお決まりのパターンだ。

必ず駅のロータリーの、一番目立つど真ん中で、

サングラスをかけ片腕を窓からだし、私を見つけると短くクラクションを鳴らす彼女がいる。

そのクールな姿は、あの人私の彼よー!!!と自慢したくなるほどかっこいい。

残念ながら生活レベルはアップしてアウディでお出迎えだが。

今でも私とユカはあのトレノを一番愛している。



今年は色々あって年明けに2回実家に帰った。

そのたびに色々話を聞いてくれ、諭され、それでも最後には私は何があっても味方だと言ってくれた。





抱かれたい女ナンバーワンのユカ。





みんなしびれるよ。まじで。





本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]

# 6-30 [永遠の見方ユカが居るから、トモ吉様はいつも優しく見守られているんだネ。 男女の友情についてトモ吉がいろいろ書いてたけ..]

# (・ε・) [漢字博士発見!!]

# (・e・) [車ボコボコ仲間発見!!]

# 6-30 [感字博士曰く、初恋→発恋、親友→真友、トモ吉のオイタを笑って見てるユカだから見方。親展て書くから親が手紙を開く。机下..]

# 浅野 忠信 [ユカ、カッコイイー。ロンゲの浅野君より。]


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