チナウ


2004-12-06 (月) 愛に生きる、その時君は暴走列車。①

出会いは偶然暴走は必然。

朝の通勤ラッシュの中、奇跡的なめぐり合わせで私ははせやんにバッタリ出くわした。

肩をぽんぽんと叩かれて振り向くと、下膨れのプックリした頬と、散切り頭、クリクリした目が上目遣いに私を見上げていた。

「トモぉ・・・久しぶりだね☆」

ブリッコという言葉はとうに死滅していても、彼の中には確実に存在しつづけていると私は確信した。

はせやんにはじめて出合ったのは今からもう5年以上も前、当時の私は自由気ままに毎晩のみ歩いていた。

その日も、ご近所の沖縄レディー・キンキンと一緒に駅前の屋台でおでんを突っついていた。

そんな私達に酔っ払った目で声をかけてきたのが彼だった。

体に合っていない大きなスーツをだぼだぼさせた小太りチビボディ、くりくりした目で下膨れな彼は、強烈な新入社員臭をぷんぷんさせていた。

彼は泣きそうな顔で、好きになった人とうまく行かないと話し出した。

なんか、好きになったのはキャバ嬢で、ずっと店にいても手も握らせてくれないとか、やっとアフターに成功し高い食事をおごったがまだ心を開いてくれないとか。

それでも最近では出勤前に食事と、ずっと店にいつづけた時だけタクシーで送らせてくれるようになったらしい。

そして今日タクシーの中で手を握ろうとしたら、手に触れる前に彼女のものすごい逆鱗に触れ、もう来るなといわれて半泣きになっているというわけだ。

あほである。

私たちはそんなのムリムリと爆笑し、またガブガブと酒を飲んでいてふと思った。

新入社員でそんな散財して大丈夫なの?

聞いたらはせやんはてれながら、ぼくねぇ、34才なのぉと舌ったらずにかたった。

超年上。イキナリ敬語になりかける私達。

そんな私達に、いいんですぅ、ぼく、ねえさんたちよりガキですぅと上目遣い。

酔った私たちもまいっかとさんざん飲み食いしていたら、いつのまにかはせやんが全部払ってくれていた。

そして私たちははせやんが近くの会社の寮に住んでいること知り、その会社が実は結構な大企業だと知りたまげた。

人事というヤツは結構いい加減なんだな。と。

その後何回かおでん屋で顔を合わせた。

ある時またキンキンと呑んでいるとはせやんが現れ、3人で仲良く呑んでいた。そしてキンキンが何かの用事で急遽先に上がった。

その時はせやんは、キャバ嬢をキッパリ諦める宣言を私にして見せた。

つか、まだあきらめてなかったのかよと私はあきれて見せたが、はせやんが相変わらず涙目になったのでさすがに気の毒に思い、よし、今日はおごってやっからとまた呑んで、結局またおごってもらった。

それ以来はせやんは私たちと呑む時はしょっちゅうおごってくれた。さすがに私たちが辞退すると、今はこれが楽しみだからといって、必ず隙を付いて支払を済ませたりしてくれた。

もちろんそればかりでは悪いから、私たちもよく呑みに行く時ははせやんを誘い、うまくおごったりワリカンにしたりして仲良くとんとんになるようにしていた。

はせやんは電話をすると嬉しそうにすぐ飛んで来て、ああ、根っからのパシリ体質なんだなと納得した。

ある日私が呑んで帰ると、家のポストに何かが入り込んでいた。

小さなポストにちょうどキッチリ収まるように入っていたのは、北海道ラーメンの詰め合わせセットだった。

中には付箋がはっつけられていた。

【部長にお土産で美味しいと評判のラーメンを頂きました。是非食べてみてください。 はせやんでしたぁ☆】

へーありがたいなと思いながら、ふと頭の中に違和感がよぎった。

その日は結構呑んでいたので、まいっかと寝てしまったが、翌朝目が覚め机の上に置かれたラーメンを見て私は違和感の正体を知った。

狭いポストの入り口から、どうやってこうもサイズぎっりちのラーメンを入れる事が出来たのか。

もちろんポストには鍵がかかっている。3桁の番号をぐりぐり回してかけたり外したりする鍵だ。 私はお礼もかねて、その辺をはせやんにメールで聞いてみた。

メールを送って5分もしないうちに返事が来た。

【Subject:ごめんなさぁい
  
昨日トモにぜひ美味しいラーメンを食べてもらおうと思って行ったんだけど、
 
鍵がかかってて入らなかったんだよ。
 
困ったなぁと思って、鍵をくちゅくちゅぅ・・・っていじってたら、偶然鍵が開いたんだぁ。

ビックリさせてごめんね☆ 】

くちゅくちゅぅのくだりで背筋に冷たいものが走ったものの、そんなこともあるものかと軽く考えていた。

しかし。ちょっとまて。

私は鍵をかけるとき、結構ぐりぐり回しておくほうだ。そして私が設定した数字は793。

それが偶然開くというのはものすごい確立だと思うし、もし開けようと思うのなら001からスタートして・・・・・

そこから先はなんだか考えてはいけないような気がして、私は偶然だ偶然だと言い聞かせていた。

しかし、こうしてメールを送り返事をもらったことで、彼に私のメールアドレスが渡った。

その翌日からはせやんの、暴走を通り越して狂ったメールが送られてくるようになる。

つづく。

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]

# pino [やべえ!「さあ、冒険のはじまりです」って声がどっからか聞こえた!! インディジョーンズの音楽とドラクエのファンファー..]

# (・ε・) [なんかね、ドラクエとかそんな爽やかなものじゃなくてね、なんかマヌケなファンファーレが鳴り響きそうですよ。ホンワカパッ..]

# (・e・) [あれだ。最後にみんながずっこけて、ふんどしで誰かが平泳ぎするやつ。(あっちこっち丁稚です。古。)]


2006-12-06 (水) クリスマスキャロルが流れる頃には

君と僕といろんなことの答えが出ていた。

あの日は、オヤブンとオオノと3人で、親分の実家近く(日本一自由で法律の無い町)の焼肉屋で飲んでおりました。

ちなみになぜか朝の10時。

そんな時間から焼肉をつまみに飲んでいるのもどうかと思いましたが、その店の開店時間が朝7時という事実に感動し、更にモーニングセットまであり、卵とトーストとサラダとコーヒーというとてつもなく平凡でビタイチ焼肉に関係ないメニューにすがすがしさを覚え、何時から飲もうがもうどうでもよくなっていたのです。

クリスマス前の今の時期、あの町に不似合いなベルの音が、シャンシャンとクリスマスソングを奏でています。

「オヤブン、ココのお肉おいしいね。」

「やろ?ここはワシがチ○ポの皮ムケる前からかよっとんねん。」

「いや。モツとか食べてるときにそれはやめて。」

「うるさい、おいオオノ、どうせお前ムケてへんやろ。焼け焼け。」

「アハハハハ。名誉毀損気味なお心遣いありがとうございます。」

じつに食欲を掻き立てられる会話を交わしておりました。

なぜこのように詳細に覚えているかというと、このとき食べたもつ盛り合わせ(大皿に山盛り5人前くらい)が、310円という衝撃プライスだったため、私の心に深く刻まれてしまったのです。ねえねえコレ何の肉?

人間とは、こんな何の役にも立たない心の垢を抱えて生きていく生き物なのですね。

そんな私たち団欒の店に来訪者が。

ガーっとあいた自動ドア。ふと見ると、公園の隅っこにかってにドリームハウス建築しちゃうようなおじさんが、両手に草を持って立っています。ナニ?

「・・・はなーーー・・・・いらんかぁ・・・・・年末の花・・・・・こうてくれぇ・・・」

おじさんがむんずとつかんだそれはまさにアロエ。根っこにはまだ植木鉢の形をとどめた大量の土が付着しており、今まさにボトボトと店内に降り積もっております。

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

厨房から大将の雄叫びが、お客無視で轟きます。ジョジョみたいでカッコイイ!

大将がフルスイングで投げた大きなタワシが、おじさんの下半身めがけて飛んでいきましたが、おじさん意外に身軽な身のこなしで股間を死守、タワシはボスっとか音を立て無事お尻に命中。その瞬間おじさん雑草を投げ捨てタワシをつかみ、商店街の雑踏の中に全力疾走で消えていきました。

残された大将、タワシ返せとか叫びながらあとを追って商店街へ。

タワシなんか盗むなよとか、それなら投げるなよとか、そんなことより中華屋のおやじって本当に威嚇するとき大きな鉄のお玉もつんだと、私とオオノ大変感動いたしました。ありがとうございました。

肉体的にも精神的にもおなかいっぱい。ご馳走さましてお店の外へ。

まだ割られたてホカホカの植木鉢が店の外に散乱していましたが、大人になると目を細めなくても見たくないものは見えなくなるもんです。みえない。みえない。なにもみてない。

その後商店街を3人でフラフラあるいていると、道にダンボールを広げお店を開いているおじさん達を発見。

冷やかし半分で見ていたのですが、某スポーツメーカーの厚手ウィンドブレーカーが500円。パチもんだ!(東京ではニセモノなんていうの?ばったもん?)

しかし500円に見えないすばらしい出来で、オオノ大喜びでご購入。

オオノいい買い物したねーとうらやましがっていたら、おじさんが姉ちゃんにはこれやろかとお人形をくれました。

髪の毛ボッサボッサの。リカちゃん人形。

タバコで悪戯したのか右手がありえない角度でひん曲がってます。片目は塗りつぶされ、当たり前のように真っ裸で、こけし職人の絵付け技よろしく、パンティが執拗なタッチで手書きされておりました。

え?なんでパンティってわかったかって?

それはご丁寧に矢印つきで、おなか部分に”パンティー”って説明書きされてたからだよ。ウフフ。(紐パンだヨ。バタフライだね!)

丁寧にお断りし、お店をあとにする私の背中におじさんの陽気な一言が。

「ねぇちゃん!メリークリ○リス!」

うん。黙れ。

その後渋谷の某スポーツ用品店へ仕事で向かったのですが、オオノが購入した500円ウィンドブレーカーと同じものが、20倍以上の値段で売られておりました。

うん。オオノの購入したやつ本物だった。

デザインをパチったものではなく、現品丸ままパチった物やった。(THE★盗★品)

オオノが感慨深そうに一言。

「あの町には本物のサンタさんがいるんやなぁ・・・。」

うん。黙れ。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

# kotoli [久しぶりにヤ○ザなお話が聞けて、なんだか安心しました。]

# (・ε・)  [先日久しぶりにオヤブンからメールが来たよ。 【住ムトコナシ。居候ヲネガウ。】 電報くささを狙っとる。]


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