チナウ


2004-11-17 (水) ポケベルガ鳴らなくて。 [長年日記]

愛が空回りして。

キョウちゃんからメールが来た。なんでもDocomoの調子が悪いのでauに変更したらしです。

私は携帯を持って10年経ちます。そして携帯を持つ前、大学生の頃はポケベルでした。ちなみにPHS登場は携帯持ち出した後。

ポケベル。

最初は本当に数字しか打てなかった。呼び出したい相手に電話をかけるんだっけ?そんでそこにかけかえして欲しい番号を打ち込む。そしたら呼び出したい人のポケベルがピーピーなると数字が出る、そこに電話をかけ返すという寸法だったと。ですよね?

いや、ひょっとすると今の若い人知らないかもしれないから。私でさえシステムうろ覚えだし。

そんでその後数字を組み合わせて言葉が出るように開発される。10個くらい登録できたのかな。

たとえば、【123】と打ち込むと、【モウカエル】(当然カタカナオンリー)となるように、自分たちで登録する。驚くほど不便な話だが10年前までは普通にあった。

そして世の恋人たちは、その言葉を登録できるシステムになる前は、独自の創造性で恋人と数字で言葉を交し合っていた。

【8181】=【バイバイ】

【0843】=【オヤシミ(オヤスミ)】

など。つか、思いつかない。確かそんな感じ。

数字の語呂合わせといえば、ものすごくうまいヤツがおりました。

何をやってもお笑い臭さをそこはかとなく漂わせる、トラブルメーカーなジュンコさんです。

これが天才的にすごい。

何が天賦の才かというと、語呂合わせがうまいこともさることながら、あわせやすくかつ彼女にあった数字が向うから転がり込んでくるという奇跡。

彼女が当時付き合ってきた彼氏の電話番号を、10年以上経った今でも私達友人一同忘れる事ができません。

その彼氏はお金持ちのお坊ちゃんで、気が弱く、何かとみんなのパシリにされておりました。

そんな彼氏の電話番号を、彼女であるはずのジュンコさんが嬉しそうに一言。

「【7107972319】だから、【なんと!泣くな!兄さん行く!!】だよ!!番号もパシられてるの!」

プライバシーの為番号は似たようなものにしています。本当の番号のほうがもっとすごいパシらされ番号でした。

そして結婚したジュンコさん。今は使われてはいませんが、新婚当初住んでた家の電話番号がこれまたすごい。

「引越ししたよ。電話番号は【○○-2253667】だから、【夫婦のゴミってムンムンなん?】で覚えてね!」

そんな先生の下に、自分の番号を覚えやすいように語呂合わせしてもらおうとする信者が後をたちません。

「ジュンコ先生、覚えやすい語呂合わせをお願いいたします!!2296966です!」

「よし!・・・・・・・・・む・・・・・・【チチ、黒々・・・ん?】でいきましょう!!最後は黒々かなぁ・・・とチクビを確認して、そして、ん?って伺う感じで!!」

「ジュンコ先生!!271895でお願いいたします!!」

「よし!・・・・・・・・・む・・・・・・【ニーナ一泊5千円】でいきましょう!!5万円じゃない所に謙虚さと恥じらいをもって!!」

ただ語呂合わせするだけでなくそのネタは全てシモに揃え、そしてその番号に対する心理描写から演技指導までついております。

そんな神がかりなジュンコさんにも敗北というものがありました。いえ、その敗北が後のシモ語呂合わせの神を生み出したのかもしれません。

アレは私たちが大学の頃、まさに数字しか打ち込めないポケベル最盛期の時代。

私たちのグループの中でも、【愛の情念天城越え】と呼び声高いきっちゃんに、彼氏が出来ました。

そこは愛の情念、平成の阿部貞と歌われた彼女、恐ろしくねっとりした密度の濃いお付き合いを繰り広げていらっしゃいました。

毎日が、惚れたはれた嫉妬に妄想、思いつく限りのオプションテンコモリの濃すぎる愛憎劇に、いつ刃物が飛び出すか我々一同ひやひやしておりました。

幸せなのに、なぜか不幸そうなのは彼女のもってする業が強すぎるからか。

彼とも1時間に数回ポケベルをならしあう、縛り縛ってギッチギチな日々。いや、正直うるさいですから。

そんなある日、彼女が体をクネクネさせながら、いやーんこの数字解読できなーい、とか言いだしました。

皆で覗き込んだポケベルには【14104】の文字の羅列。はて。

わかんなーいとか言いながらクネクネするきっちゃん。なんだこりゃと頭をひねる私達。さすがのジュンコ先生もまだ駆け出しの頃、一緒にうなっておりました。

しかしそこは所詮人の彼氏の送った暗号、興味は30秒も持続しやしない。

すぐ他の話をはじめる私達に痺れを切らしたきっちゃんが、わかったー!と大声をあげました。なになに?

「【1】をローマ字の【I(アイ)】にみたてて、【アイシトーヨ】だ!!」(すんません。当方関西出身です。)

いやいやいやキミタチ。それ、事前に打ち合わせ済みでしょ。そんな解読普通ありえんでしょ。

やっだーとか言いながらまたクネクネするきっちゃんを、私たちはなんか・・・こう・・・物悲しい思いで見つめていました。

あれだな。やっぱ初めてのセックスが愛に満ちてないと、女はその後微妙に歪むな。

初めて出来た彼が彼女もちで、セカンドでもいいからとすがったきっちゃんの切なさが、今のこの新しい幸せに対する執着とそれでも拭えない幸薄感をかもし出しております。

やれやれ。

あれいらい数字の【1】をみると【I=愛】を思い出すハートフルな私達。

そんなきっちゃんも離婚を乗り越え、今ではすっかり落ち着いて一児の母。

ジュンコですら二児の母ですから。ね。ジュンコさん。

「セックスレスやった。1発で当てて1人目。ずーっとまたセックスレスで、そろそろ2人目欲しかったからまた1発でビンゴ。」

「これこれ、1発1発てお下品ですよ。」

「1はほら、愛だから☆」

うん。死ね。


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