チナウ


2004-01-15 (木) シンプル。 [長年日記]

そんな僕の脳。

その男の事を実は誰も良く知らない。

彼は常に寡黙で、己の拳だけで生計を立てていた。

そのボクシングという商売すら、彼に向いていたかどうか定かでない。

彼の戦うスタイルは独特だった。

前へ前への選手たちの中、彼はいつも打ち込むと1歩後ろへ退き、常に相手との距離を神経質なまでにとっていた。

彼の硬い体は全てのパンチを跳ね返す、それは彼自身が閉じこもる殻のように全てを受け付けない。

彼の目には、敵に対する恐れとか、退く事へのためらいはない。

常にどこか遠くを見るような、そんな他人事のような視線にいつも対戦相手は困惑する。

彼の中にはいつも孤独しかない。

四角いリングの中で、敵という最大の理解者がいるというのに。

その目に映るもの全てを拒絶していた。

相手のパンチが空を切る。

彼はまた1歩下がる。

常にその距離は埋まる事はないのだ。

と。

そんな映画だと思っていました。

これ。

大間違い。


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