チナウ
2003-07-23 (水) あなたを最後まで愛しぬいたのは。
■ まぎれもなくこの私でしょう。
朝起きて、あーダリー、会社行きたくねーとか言いながらテレビをつけたら、弟がアップで映し出されひっくり返りました。
ああ。捕まったな。
そう思っていたのですが、犯罪ではなく何かの大会のインタビューでした。
まだ捕まっていないようです。よかったよかった。
そんな寝覚めも心臓にも悪い朝。当然天気も悪いです。皆様いかがお過ごしでしょうか。
テレビといえば思い出します。ウチのおじいちゃんの事を。
母方のおじいちゃんなのですが、あまりあった事の無い割にはいろいろと心に残る名場面を残した人でした。
アレは私が小学校低学年の頃。
かなり久しぶりに母方の実家へ遊びに行きました。
いや、久しぶりというより、母の実家での想い出はこの時ぐらいしかほとんど残っていません。
ここにはタミちゃんという私と同じ年のいとこがおりました。
久しぶりに帰る母と私たち兄弟(お父さんは仕事でこれなかった)は皆から大歓迎を受けたのですが、子供心に私たちが主役なのが悔しかったのでしょう。私はタミちゃんに庭に呼び出されました。
庭の池には大きな鯉が泳いでいます。
商店街育ちの私がめずらしがって喜んでそれを見ていると、一番大きな鯉はタミという名だと教えてくれました。
一番大事な鯉だから、おじいちゃんがタミと名付けてくれたと誇らしげです。
今思えば鯉と同じ名てと思うのですが、それはそれで羨ましく思いました。
その後タミちゃんはおもちゃの指輪詰め合わせを見せてくれ、コレもおじいちゃんに貰ったものだと自慢しました。
1個100円ほどのおもちゃの指輪が羨ましく、私しょんぼり。
しかしソコはウチの母親。8人兄弟の末っ子。
姉達からも可愛がられ(恐怖の女系家族)、おじいちゃんに至っては目に入れても痛くないという溺愛振りです。
久しぶりにきた私たちに、お母さんの姉達からの貢物の嵐がおこり、いよいよという所で私はおじいちゃんに呼ばれました。
皆の見守る中おじいちゃんのお膝に座る私。
おじいちゃん、なにやら大きな包みを私に渡してくれます。私がやっと抱きかかえられる大きさのプレゼント。
勝った。
私はタミちゃんの視線を意識しつつ包みを開きました。
出てきたものは。巨大フランス人形。
いらねーーーーーーーー・・・・・!!!!!
立派過ぎて心底怖いです。マジかんべん。
しかも人形を寝かしつけるとでかい目が閉じます。
ビックリして抱き上げたら、ものすごい勢いで目がカッっと見開きました。
ちびるかとおもいました。
一応お礼をいいしぶしぶ家へ持って帰りましたが、お母さんにお部屋に飾りなさいといわれ、断固拒否してけんかになりました。
お父さんに言いつけるよといわれたので、弟が使っていた小さなイスにその人形を座らせ、お父さんが帰ってくる頃を見計らって玄関に置いておいたら悲鳴が聞こえました。
帰宅時のお父さんのコメント。
なんじゃこりゃ。
その一言のおかげで、人形は押入れの奥底へ眠る事になりました。
そんなおじいちゃんもやはり男。
おばあちゃんを亡くして10年後、なんと女性をどこからともなく連れて来、家の離れに囲いだしました。
おじいちゃん82歳。彼女39歳。
明らかにギブミー財産。
39歳の彼女は、別れろと手切れ金を積み上げ迫るお母さんの姉達に、
「お金じゃないんです。分かってください私たちの気持ちを。」
と泣き崩れてみせる女狐ぶり。
しかしソコは気の強いお母さんの姉達。
一族を仕切っている長女がおじいちゃんから預かっている実印を見せ付け、結婚も財産分与も認めないけれどもあなたたちの愛の邪魔はしません。
どうぞ離れで2人仲良く暮らしてください、もしものときはシモの世話もよろしくねと微笑みました。
彼女は一晩考えさせてくださいと手切れ金を手にいったん離れに戻った後、次の日には荷物ごとごっそりいなくなっておりました。
おじいちゃん、ガックリ。
それから数日たったある日の夕食時。テレビでご機嫌に巨人戦を見ていたおじいちゃん。
大ファンのクロマティーが三振した瞬間、
「クロちゃんの一大事じゃ!!!」
と叫び、テレビの裏側を破壊して入り込もうとしていたところを家族に取り押さえられました。
おじいちゃん失恋。ボケライフスタート。
その頃からテレビでクロマティーが映るたび、
「クロちゃんの一大事じゃ!!!」
と叫び、三振してもしなくても、クロマティーが笑わない限り叫びだし、
テレビの裏側を破壊し入り込もうとします。
じいちゃん。そんなに大事かクロマティーが。
おじいちゃんのボケは重度のものではなく、正気に戻ると恥ずかしそうにテレビを修理に出します。
だって。テレビがないとクロちゃんにあえないもの。
恥ずかしがって一度頼んだ電気屋へは二度と頼まないため、家族は町じゅうの電気屋を捜さねばなりませんでした。
クロちゃんの一大事
↓
テレビ破壊
↓
正気に戻る
↓
修理
↓
頼める電気屋がなくなって行く
永久に続くかと思われた地獄のループ。
ああ、もう頼める電気屋が町じゅうからなくなる、頼むテレビ局、もうクロちゃんを映さないで、いや、
クロマティー幸せでいてくれ!!!!(血を吐くような一族の叫び)
そんな家族の願いが神様に通じたのか通じなかったのか。
ある日おじいちゃんのお風呂がやけに長いと気がついた家族が見に行った所、
おじいちゃんはステキ☆出汁になって天国の階段を駆け上っておりました。
最後の最後まで人騒がせだったおじいちゃん。
それでもお風呂場で大往生というのは天国へいけると言われていているらしく、
ちゃっかりそれで人生を締めくくってみせたおじいちゃん。
最後は子供よりも孫よりも愛人よりも、
誰よりもクロマティーを愛したおじいちゃん。
きっと天国でもクロマティーを心配している事でしょう。
おじいちゃん。おじいちゃんが思っているほどクロマティーは困っていなかったんだよ。
そう教えてあげればよかった。
その1年後、私は西宮球場のある駅の改札をダッシュで出ようとしてクロマティーとぶつかりました。
ダイジョーブ?
彼はけっこううまい日本語で私に微笑みかけてくれました。
ああ。おじいちゃんにこの笑顔を見せてあげたかった。
そう思いながら見上げたクロマティーの笑顔は、
それでも少し困っている顔のようにも見えるものでした。
おじいちゃん。クロちゃん困ってるよ!!
そう思ったのですが、化けて出てきそうなので慌てて取り消しました。
うそうそうそうそ、クロちゃん幸せそうだよ!だから成仏してね!!タノム!!
家へ帰ってお母さんにその事を話し、もしおじいちゃんが幽霊になって出てきたら嬉しい?ってきいたところ、
それはそれでちょっとヤダと言っておりました。
そんなもんですよ。娘なんて。
# pino [あれは俺が小学生だったころのこと。土地柄もあり熱狂的な阪神ファンが多かったのですが、彼らはクロマティーがテレビに映る..]
# (・ε・) [ホント子供って、ひねりもへちまもない鬼ね。くろーて。もっと他にいうことあるやろ。]
# (・e・) [たとえば?]
# (・ε・) [・・・ピンクはぐき。]
# (・e・) [・・・・・。]
# 6-30 [クロー、シロー、ゴロー、ヤロー、トロー。 TVのないおじいちゃんて、ネットのない6-30か、酒のないトモ吉だよね。]
# (磁ε・) [ほんともう、お酒って特別なものじゃないもんな。お茶の次にお手軽なものな。]
# (・e・) [そんな事いってるから文字化け。怖いよ。]