チナウ
2006-02-01 (水) Do you remember? Oh! [長年日記]
■ 積み木崩し
大阪にいた頃、毎日のようにミホコと飲み遊んだ。
夜出会う人たちとは独特のあうんの空気を共有していて、友達どころか知り合いとすらいえないような、でも顔を見れば知っているという人たちが出来てくる。
目が合えば、よう、とか軽く声を掛け合ったり、たまに立ち話したりもする。
でもお互いの素性はほとんど知らず、夜見かけた情報だけが全てだ。
隣で変な踊りを開発しては笑わせてくれるガボちゃんはなぜカボちゃんと呼ばれているのか分からないし、それを見て涙を流して笑っているマユちゃんは本当にマユなのかも分からない。
その挨拶する程度の、深く関わらない関係が気楽で私たちはクラゲのように夜を漂う。
その日も、ズンズンと低音が腹の底から響くクラブの片隅のちゃちなテーブルを陣取り、私とミホコは部長の悪口とか同僚のモノマネとかして遊んでいた。
かろうじて名前はわかるぐらいの知り合いが、一人、又一人と加わってきた。加わった一人の連れ、又その連れというかんじに、8人ぐらいで飲んでたように思う。
その中にミサエがいた。
ミサエとちゃんと話したのはその時が初めてだった。ミサエはあまり評判のよくない女だった。
しかし、今目の前にいるミサエはごく普通の女の子だし、第一印象は別段不快に思うところはなかった。
話し始めてスグ、ミサエが何故この輪に入ってきたのか分かった。
名前を忘れてしまったが、その輪の中にお笑いの麒麟の声のいいほうに似た男の子がいた。どうやらその子が好きらしい。
麒麟が話すときは、体全体をそちらに向け熱心に聞き(隣の人とは背中で壁を作って2人の世界を演出☆)、他が話しているときは普通で、その話に麒麟がつっこむと積極的に笑ったりと、ものすごい勢いで分かりやすい態度をとっていた。
しかし麒麟はミホコに熱心に語りかけている。しかたない。ミホコはモテる。
いきなりミサエが、麒麟以外の人間に初めて話し掛けた。ミホコだ。
「ミホコの彼って、キアヌリーブスに似ててすっごくかっこいいんでしょ?」
これは本当の話で、当時ミホコが付き合っていた彼は白人で、キアヌリーブスに本当によく似た男前だった。
男性というものはなぜか外国人と付き合う女性には何かあるらしく、一瞬麒麟の勢いが弱まる。
また他愛もない話をしていると、またミサエが口を開いた。今度はサユリにだ。
「サユリって彼いるの?いるんでしょ。だって指輪してるもん。どんな人?」
何故イキナリそんな事を聞くのか。サユリが同じ会社の人で〜と戸惑いながら答えても、聞いたミサエはもうほとんど聞いていなかった。
しばらくすると又ミサエが口を開いた。ミカコにだ。
「ミカコ、そのネックレス男の人にもらったでしょ。彼?いいなぁ。」
「え?!あ、うん、そうなんだけどどうしてわかったの?」
「なんとなく。ほら、私たちだと自分ではえらばなそうな感じのものかなって。男の人がなれないながらも一生懸命選らんだっぽい。それをちゃんとつけてるってことは大事な人からもらったのかなって。いいなぁ、すっごく愛が込められてる感じがする!」
よくよく聞くと微妙に失礼ちゃうんかという言葉だが、ちゃんとうらやましがってフォローしてる所があざとい。つかおまえ探偵か。
ミサエがあまり女子から評判がよくないのがなんとなく分かった。
あれだ。気に入ってる男性の前で自分をアピールするんじゃなく、その他を一つづつ蹴り落として排除していくタイプの女なんだ。誰も狙ってなくても人の条件を落として自分をよく見せようとするやつ。
合コンなんかでたまにコレ系の女は出没するが、ココまでハッキリしたタイプにお目にかかったのは初めてだった。
そんなミサエの視線が、麒麟を見ながらもこちらに注がれだした。次は私の番なのか。
しかし当時私に彼はおらず、身に付けている装飾品も自分で買ったピアスとバングルのみ。さあ。どうするミサエ。
「トモにソックリのAV女優がいるんだってね。ウフフフ。」
そう来たか。
いや、ちょっとまて。絶妙な止めかたしないでくれ。
もっと笑うとかしないと、本当に出てるみたいだから。いや、それが狙いなのか。
しかしココでミサエに誤算が。
だれだれに彼がいるとか言う話題はあまり盛り上がらないが、この手の話による男の食いつきのよさを甘く見積もっていたようだ。
皆でどんな作品かとか、商品価値ゼロとか、失礼な発言連発されながらも場は盛り上がっていた。他の女の話題で麒麟が盛り上がるのが微妙に面白くないらしく、ミサエは彼と2人のトークに持ち込もうと必死だ。
「私もね、難波とかで変なスカウトマンによく声かけられるんだけど、あれ、うざいよね。キャバクラとかでもいやだけど、もしAVとかだったらものすごく嫌!そんな目で見られるなんて!失礼だよねそんな話持ち出すなんて!」
「いや、オマエ今そんな話持ち出したやん。」
ミサエ。自爆。
思わず小声で、「ミサエ、自爆。」とミホコにささやいたら、奴はマンガのようにコロナを噴出しながら大爆笑。その姿に私も連鎖反応を起こす。私たち2人は笑い出したら止まらないたちで、お互いが笑うお互いの姿に更に笑いが止まらなくなり、のた打ち回るくらい笑った。サユリとミカコも敏感にミサエの放つ空気を読み取っていたので一緒になって爆笑。麒麟は自分の突っ込みに皆がウケたのが嬉しいらしく、ミサエのことほったらかして一緒に爆笑。気がついたら居心地が悪いのか、すっと席を外すミサエの後姿が見えた。
策士策に溺れる?人を呪わば穴二つ?
そんなかんじ?
テレビをつけたらスマスマで、Earth, Wind & FireがSeptemberを歌っていた。
とても懐かしく優しい気持ちで観ていたが、スマップの歌唱力とかそんな事より、Earth, Wind & Fireのメンバーのなかに、一人異様に顔が長い人がいて釘付け。しかもノリノリ。
ミホコがここにいてくれたら。
耳元で「顔ながっ!」っていったら絶対爆笑してくれるのに。
「トモちん、それアウトアウト!ばちあたる!!」って絶対いってくれるのに。
ばちてアンタ・・・。
2006-02-08 (水) なんとなく異空間。 [長年日記]
■ 痛恨の失点
社内でもダンディーで評判のいい部長。
今日もステキなよく響く低い声で、なにやら部下に激を飛ばしております。
「なんでそうなるわけ?わけワカメだよ!!理由を言ってみそ!!」
あ。ダブルだ。
■ ブリリアント。
いつも通勤で使っている地下鉄は築地にも連絡しているせいか、おおきな籠をぶら下げたイナセな仕入れお兄さんたちが乗ってたりします。
今日隣の車両に移った瞬間、一番手前に座っているお兄さんの足元に置かれた荷物を蹴ってしまいました。ドアで死角になっていて気が付かなかったのです。
すぐさまゴメンナサイと平謝りしましたら、お兄さんイイデスヨーっと軽く許してくれました。 お兄さんの足元には。フツーのスポーツバックが。
それにはブリが裸のまま突っ込まれ、少しあいたチャックから下半分が剥き出しに出ておりました。
心がヒロイ!
■ 時期尚早
地下鉄というものは外が暗いので、ガラスに自分の顔がとてもよくうつります。
今日は隣に白人のおばさんが座っておりました。
2人並ぶと、東洋人と白人の彫りの深さの違いにチョットだけしょんぼりします。
ノッペリしとる。わし。
そんな私たちの前に、私を更にノッペリさせたおばさんが乗ってきました。寝起きなのか瞼も厚ぼったく、全体的にヌボーとしたかんじ。
三人掛けの席に一人陣取った彼女は、やおらカバンから化粧ポーチを取り出しメイク開始。
空いてるし、景色も見えないしで、私と白人のおばさんはその女性をなんとなく見ておりました。
女性はうつむき、膝に置いた鏡を見ながら作業をする為、髪も垂れ下がり表情はみえません。
しかし、下地クリームを取り出し力強くヌリヌリしだしたあたり、奴は本格的に作り上げるようです。
リキッドファンデもヌリヌリ。濃いいオレンジを顔の周りにぐるり。小顔狙いですね。
顔が長くくすんでいるという私と似たようなお顔立ち。分かりますよ、その気持ち。
ノーズシャドゥらしきものを鼻にそってサラサラ。顔色をよく見せるために白めのお粉をパフパフ。
次にポーチから取り出したものは。修正液?修正液のようなものを、瞼一杯に思いっきりヌリヌリし始めました。私ビックリ。当然隣の白人おばさんもビックリ。2人して目が離せません。なに?ヤマンバ?
次に女性は小さな棒のようなものを取り出し、瞼のあたりをグリグリ。あ!アイプチだ!!!アイプチしてるのちゃんと見たの初めてだ!ビックリとチョッピリ感動。しかし隣の白人おばさん、ますます訳がわからなくなってます。
海外にはあるのかな。アイプチ。
白人の人は彫りが深いから、メイク方法も日本と若干違うんでしょうね。
以前知り合いのアメリカ人女子にメイクポーチ見せてもらったら、ファンデーションと極端な色のアイシャドゥと口紅ぐらいしか入ってなかった。
日本の女性のメイク技術はすごいですよ。
スッピンに見えるようなナチュラルメイク。(実はコレのほうが厚化粧)
小顔に見せるように影つけたり、鼻高く見せるようにシャドゥ入れたり、目を綺麗に見せるように白さしたり黒さしたり。顔のイメージというか根本のつくりとか、丸ごと変えたりするものね。消しきれないハッキリした顔は持ってませんが、ノッペリしてるからこそできる技ですね。 日本のお家芸、電化製品を何でも小さく作るやアニメに加えて、是非是非世界に誇って欲しい技術です。
そうこうするうちに女性はグロスをヌリヌリ。んーパ!で馴染ませてから顔を上げました。
・・・・・・。
疲れたおばさんだったはずが、清楚な矢田系お嬢様に変身してました。
隣の白人おばさんあんぐり。私も負けずにあんぐり。
いや。世界に紹介するにはスゴ技過ぎた。
2006-02-14 (火) ホッピー最強伝説。 [長年日記]
■ ありがとうホッピー!
ホッピーという飲み物をご存知でしょうか。発泡酒が出てきた影響か、最近また復活してきましたよね。
ビールが高かった時代の代用品として生まれたもので、焼酎をビールのような色をした炭酸(ホッピー)で割って飲むものです。見た目はビールですが、ビールとはまったく異なる味で、まあ焼酎の炭酸割って感じですが、値段が安いので全然許せます。
それでも昔にくらべると、味は大分おいしくなったそうです。それどころか、イッチョ前の値段取る店まで出てきました。
さて。
昨日は久しぶりに彼が早く上がれました。会社の車にのって帰ってきたので、ビデオを返しに行くついでに近所を軽くドライブブー。そんでそのままいつも行く安い焼き鳥屋さんへ。幸せですね。
昔の事は知りませんが、最近はホッピーにもビールのように白と黒があって、最近私は黒がお気に入りなのでそれを注文。
最初は焼酎とホッピーセットで380円くらい。注文すると小瓶に入ったホッピーと小ぶりのコップにナミナミ注がれた焼酎、それに氷の入ったジョッキが出てきます。ジョッキにホッピー全部をあけると、ジョッキ5分の4くらいまで来ます。お好みに応じて中(焼酎)だけとか、外(ホッピー)だけとかおかわりします。
私は全部ジョバーとジョッキに入れて、残りのスペースにホッピーを入れますので、中3・4杯につきホッピー1本ってところです。
しかしこのホッピー。安い焼酎ガバーっといれて飲むので、お店側が作る他サワーとは比べ物にならないくらい早く酔います。月曜日だし。慎重に飲まねば。
彼も最初は生ビールで、そのあとホッピー参戦しました。
彼も私と同じ全部中をいれちゃうタイプ。
そんで、シーザーサラダとヤマイモ短冊、お互い串物を6本づつつまみまして。ホッピーはお互い4杯づつくらい飲みましたらいい感じに酔いもまわり、月曜日だし軽めにしようと〆に入ることにしました。
彼が〆用の小ぶりラーメンと焼きおにぎりを注文。私も焼きおにぎりをちょっとかじらせてもらったり、彼は食べ終わったラーメンのスープに焼きおにぎりを入れてお茶漬け風にしたりして。
そんで満腹、たいそう幸せにお勘定いたしました。
4500円。やすっ!
2006-02-23 (木) たくさんの事が変わってゆくとあれは幻のように想えて。 [長年日記]
■ みんなのうた。
初めて彼に会ったときの事は正直記憶にない。
私はもともと薄情なほうではあるけれど、それ以上に彼の温和な性格が、尋常じゃない自然さで馴染んでしまったからではないかと思っている。
大きな体に金髪碧眼。絵に描いたような外国人のスコット。
・・・・目立つはずなのに。
バツ3はっちゃけ姉さんと久しぶりに電話で話した。
知り合いの離婚ゴタゴタ騒動の顛末を聞いた。あまりにもやりきれない切なさに胃が痛んだりした。
そして他の人たちの近況を聞いた。
私はいつものように、スコットは?スコットは幸せになってる?と聞く。
スコットはとても穏やかで優しい性格だ。
私がバイトしていたインド料理屋に、何時の頃からか一人で飲みに来るようになった。
そのきっかけがまったく思い出せないが、ずっと前からいるように、スコットは控えめにカウンターの端でニコニコとお酒を飲んでいた。
時にはチビッコギャングたちの勢いに驚きながらもニコニコし、大人なお客さんたちとは仕事の話をポツポツしたり。
人のことを悪く言わず、怒らず、たまに酔っ払って一緒にはしゃぐ。
そんなスコットが皆大好きだった。
店は駅のすぐそばにあった。店のほとんどが大きな窓で囲まれていた為、道行く人がよく見える。
私はカウンターの中から知り合いを見つけると、すぐ飛び出して捕獲したりしていた。
今思えば嫌な店だ。
だから割と一人客も多く、そうなると客同士も仲良くなる。そこに地元のチビッコギャングが新しい友達や恋人、時には親なんかもつれてきたりするので、店はいつも訳の分からない客層で賑わっていた。
その町はどの繁華街にも近いため単身者も多いが、下町情緒も残っているという理想的な場所で、古い住民にも新しい住民にも大変住み心地の良い町だった。
近所の大きな公園の桜が咲き始めたので、んじゃ花見でもすっかと酔っ払いながら勢いで決めたら、当日なぜか30人ほど集まり、花見弁当らしいものの中にエスニックなタンドリーチキンやケバブなんかが転がり、昼過ぎだったはずなのにいつのまにかすっかり夜で、ギャングのお父さんたちが尺八と三味線をかき鳴らし始めれば、地域で有名な民謡のチャンピオンが自慢の喉を披露する。
満開の桜の下インド人のオーナーやスコットは感激して正座、私たちは近所に住む友人の家から大鍋で作った豚汁を運び出し暖を取り、気がついたら配給のように見知らぬおっさんが豚汁を配る列に並んでいた。
そんな私たちをみて、スコットはいつも決まってクレイジーだと笑う。
そんな下町情緒の残る楽園にも開発の手は進み、駅前は工事が続くようになる。
目の前の道路や駅の降下を掘り起こす工事が連日連夜続けられ、カウンターから憂鬱にその作業を見つめる日々が始まった。
店内は工事の騒音が流れ込んできたりしたが、ありがたいことに常連の足が遠のく事もなく、皆毎日元気にお酒を飲んでいた。
その日もやっぱりスコットはいて、もう一杯、いやもう帰るなんかをお約束のように3杯ほど繰り返し、そしてニコニコと帰っていった。
深夜0時になり目の前の工事は終了。まだ残っていた常連さんたちとだらだら飲んでいたら、入り口のドアがカララと開いた。
みると今まで道路を掘り起こしていた人たちが遠慮がちに、一杯だけ飲ませてもらえませんかと言ってきた。
一応軽く着替えてきているが、こんな格好でも入れてももらえるかとものすごく心配している。
うちはべつに普通の店だし、どうぞどうぞと招き入れたら、皆仲良く生ビールをおいしそうに飲みだした。聞くと東北からこの季節だけ働きに来ている人たちばかりで、このまま寮に帰っても寂しいし、いつもこの店でみんな楽しそうに飲んでるのが羨ましかったと教えてくれた。
もちろんオーナーも当然のことウェルカムだし、私たちも一緒になって飲んでいた。
そうなると懐かしい故郷の話が飛び出して。うちの田舎の酒もうまいとか誰かが言い出して、寮に隠しておいたとっておきの地酒を誰かが取ってきてくれて、オーナーもオウ!フルーティーデスネ!とゴキゲンで、いつのまにかテーブルにはあたりめとかトバだとか、日本人のソウルフードが所狭しと並べられた。皆気のいい酒飲みばかりでもりあがった。冗談のようにビールがおかわりされ、一升瓶が3本ほど空いた頃、その作業場のリーダーらしき人が若手に、おい、あれもってこい!みたいな指示が出て、そこに大きな保冷の発泡スチロールの箱が運び込まれ、中から見事な蟹3ハイが飛び出した。
ウメー!!蟹超ウメー!!日本酒もススムー!!とまた大盛り上がりで、ふと気が付くと店の外をスーツを着た通勤の人たちがたくさん通り過ぎる時間となっており、みないぶかしげに店を一瞥しては去って行く。通勤ラッシュの中には当然のように知り合いがたくさんいて、ほんの8時間ほど前まではベロベロでカウンターにだらしなく突っ伏していたはずのイガリが、酒の抜けない死んだ目で店の前を通過し、私たちのほうを見て信じられないという顔をしたあと、更にウェっとなっていた。 そして日も高く上った頃フレックスのスコットが前を通過、こちらを見て驚いているので、カニーと頭上に大きな蟹を掲げて見せたら、更に腰を抜かしそうになっていた。
ホントッッ、クレイジーダヨッッ!!
その日だけはめずらしく絶叫したくせに、やっぱりその日の夜も皆店に集合していて、なんか蟹の臭いが抜けなくね?とかいうので、それをつまみに飲めばいいやんとか言ったらものすごい勢いでブーイングをくらった。
あの町は更に開発がすすみ。今では小汚いラーメン屋が潰れたりして、バーやイタリアンの店が増えてきたらしい。
近県からも子供が集まってくるという評判のクラブまであるというのでたまげたら、よくよく聞くとその店は私がいた最後のほうに出来た店で、近所のチビッコギャング達が週末にインチキDJをしたりしていた所だった。仕事終わりにコーちゃんとのみに行き、ガバガバのみ過ぎ明け方解散、荷物を一式無くした私は再びコーちゃんの家のインターホンを連打。その後2人で店に乗り込み、酔いつぶれて床で死体になっているオーナーをたたき起こし、冷蔵庫の中まで荷物を捜した印象深い店のことだった。
オーナーいっちょまえに調子くれてるんじゃないかとおもったが、相変わらず気の弱い優しい人で、平日は姉さん達にいじられてオタオタしているらしい。
あの、店の前の道路工事の音は、町の変わりを知らせる音だったのかと思うと。少し寂しくなったりもして。
そして残った人たちで新しい人たちに、かつてこの町にあったあの店のことを話したりしているらしい。
ありがたいことに、トモは最近どうしているのかとよく話題に上がるそうだ。ありがとうみなさま元気ですよ。行けない距離じゃないけれど、そこで飲んで酔わずに無事家にたどり着ける自信がまだ持てませんのでご無沙汰しておりますが。
スコットは酔うといつも、あのインド料理屋は特別だったと言う。
あの頃のスコットは、日本にきたばかりでなじめず、仕事の重圧とホームシックでノイローゼになりそうだったらしい。日本語もまだうまくなかった。
そんな時あの店にめぐり合い、いつも店の前を通ると誰かが声をかけて自分を迎え入れてくれた。一人で夕飯を取る事が極端に減った。仕事場で夕食を済ませた後でも、あそこに行けば誰かいて、そして一日を満ち足りた気持ちで締めくくる事が出来たと。だからあの店にボクはすごく感謝している、ボクの運命を変えた店だといつもいうらしい。
そんなオーバーなと思うのだが、実際スコットは今恋人と、スグとなりの駅にマンションを購入してしまった。
ボクはもうこの思い出の詰った土地から離れられないよが口癖で、ずっと日本にいると宣言。日本に来るまではほんのちょっとの予定だったのに。
うんスコット。確かに運命かわっとるよ。
スコットは優しすぎて、いつもなんか女性に利用されるような恋愛が多かった。
そのくせ私より10コ年上のこの心優しい友人は、お兄ちゃんのように私のことを心配してくれた。
だから私はいつも、スコットは幸せになってる?と聞いてしまう。
スコットが幸せになっている事に救われ、憂鬱な友人の離婚話から少し開放された気持ちになった。
私ももし一人身になってしまったらあの町にかえるので、ぜひ温かく迎えてくださいとお願いしておいた。
すると姉さんはこんな事を、結構本気に言い出した。
「メキシコのカリブ海の近くに土地買ったの。そんで地元の人たちと交流してみたらお好み焼きが意外に好評なのよ!家建てたら庭にテントはっておくから、トモ、お好み焼き売ってみてよ!」
・・・・・エエエエエーー・・・・・・・カリブ海て・・・・・・・・。
カリブ海の近くでお好み焼きを焼きながらタコスを食べている自分を想像して。
人生にはどんなきっかけや出会いがあるかわからないけれど、できれば日本に骨を埋めたいなとぼんやり思う平凡な私がいた。
# 6-30 [特攻自爆したみさえさんのご冥福をお祈りします。しかし、とも吉さんもいつもばちが当たっているようですな。6-30は自分..]
# (・ε・) [罰当たり人生です。ヤタ!]