チナウ
2005-08-12 (金) 夏の思い出。 [長年日記]
■ 戦いつづける子供たち。
黒い下着を身につけようが、ガーターベルトを所持しようが、Tバックだけははけません。はけません。何があってもはけません。
さて夏休ですね。
平日の電車は、かりんとうのようにこんがりと焦げた子供の手を、嬉しげに引くおじいちゃんおばあちゃんで一杯です。座席があくと、必死に孫を座らせようとする、どうみてもおじいちゃんが座ったほうが効率いいのではないかという微笑ましい現象が起きています。
今日も電車の中で、いかに夏休の宿題が大量で難しいかをうったえる孫に会いました。
おじいちゃんは、そんなん気にせんで遊んだらええ遊んだらええと、子育て第一線を完全に卒業した達観振りで無責任に甘やかしておりました。
私が小学生の頃の夏休は、楽しくも有り、そして戦いに満ち溢れた日々だった。
その戦い相手とは宿題ではなく、迫り来る始業式への恐怖と、そして両親、主にお父さんとの戦いだ。
ウチの父親は、父本人の歩んできた歴史と私の性格からは想像できないくらい、規律というものを重んじまくった子育てだった。
夏休の午前中、テレビではドラえもんクラスからワンランク落とした【パーマン】だとかをリーダー格に置き、巨乳狙いのはずが道を誤りとにかく問答無用にでかいヒロインにあるまじき太り方をした女と、それに付きまとわれながらもまんざらでもないというノミのように小さい男の、どういった年齢層がターゲットなのかサッパリ分からない【かぼちゃワイン】なんかを、毎年毎年執拗にくり返し再放送していた。
我が家は厳格な父のもと、午前中のテレビ権は一切与えられず、一番下の弟は1時間、次の弟は2時間、私は3時間という勉強時間という名の宿題消費枠を儲けられた。
子供が真面目に3時間も勉強できるはずがない。いや、今でも出来ない。
実家は商売を営んでいたので、お店が開店する9時以降なら、母もおいそれと2階には上がってこれない。
宿題をしているだけではとうてい出せない大音量をさせドタバタと暴れるが、母が2階に乗り込んでくるまでに、ダッシュであらかじめ広げておいた教科書を掴み知らん顔をすればセーフ。
宿題も犯罪も現行犯逮捕が基本。
敵ではない。お母さんは。
問題はお父さんだ。
9時に帰ってくる父に、普段はおやすみなさいと挨拶し、入れ替わりにお布団に入る私たち。平和な一日の終り方だ。
そんな日々の中、父は不意打ちに宿題をもってこいと言い出す。
夏休に入る前に、通信簿と出た宿題の量を申告している私たち。ご丁寧に、1日の宿題消化スケジュールまで書かされている。
それに間に合っていなければ何故間に合わなかったのか意地悪く聞かれ、どう答えてもゲンコツが降る。
そうなったらまた子供は知恵がついてくる。
とりあえずいつも算数ドリルのノートには、問題にあわせて3桁か4桁の適当な数字を殴り書き、赤鉛筆で丸をつけ、丸ばっかりじゃ怪しまれるからと10問に1回ぐらいの割り合いでバツをつけるという、一番手間取る算数ドリル10ページを、ちゃんとやったかのようなウソッこノートを3分で製作するという日常を繰り返す。
漢字ドリルは殴り書き。ごまかしようのないピアノの練習20分が一番の難関だったが、それ以外は概ね快適にズルできた。
しかし敵もなかなかやる。
ある日いつものように算数ドリルを見ていたお父さんが、いきなり私に15ページの問1の答えを言ってみろと言い出した。
答えのページを見ながらおそるおそる数字を読み上げる私。あっている筈はない。
次の問題もその次も、あってもいない数字に丸がついてる始末。
その後私はゲンコツをもらい、すべて消しゴムをかけ、やり直しを命じられた。
しかしそれでくじけていては、楽しい夏休は手に入らない。
次から私は、算数ドリルの問1〜5ぐらいまでを真面目に解き、その後を適当数字に丸という技で実際数回父の抜き打ちチェックを乗り越えた。
すっかり味を占めた頃、父はイキナリ最後の問の答えを言えと言い出した。
またゲンコツ。やり直し。
今度は1や5や10などの分かりやすい数字の前後だけ真面目に解くというように方針を変え、数回パスするもののまたバレてゲンコツ。
完全にいたちごっこになった頃、真面目にやったほうが肉体的にも精神的にも楽なのじゃないかとふと気がつき、所詮子供の浅知恵と我が身をはじ、そうして子供は夏休に一回り大人になって行く。
しかしそれでも懲りずに悪巧みは進む。子供にだって意地はある。
一番時間を食ったと言い訳に使えるのが読書感想文というやだ。
読書感想文は何を読んでもよかったのだが、各学年ごとに推薦図書が決まっていた。
私が小学校3年生でチャレンジしようとしたのは【アンクルトムの小屋】だ。
1ページが2段に分けられ、小学生が読むには一番長くて難しい本とされてた。あえてコレを選ぶ。
そうすれば、今日はココまで読んでたからと言い訳し、ドリルで稼いだ分の時間をごまかす事ができるのだ。
もちろん本は全部読まない。
小学校の図書準備室に、過去の読書感想文が綺麗にファイリングされているのを、図書室掃除当番だった私は知っていた。
推薦図書だった【アンクルトムの小屋】の読書感想文はたくさんあり、それを夏休み前に事前に読んでいた私は大体のあらすじを知っていた。あとはあとがきとか、最後の数ページを読めば充分感想文が書ける。
しかし普段まったく本を読まない私がこんな作戦を仕掛けた所で、宿敵お父さんに見破られれないほど夏休は甘くなく。
どこまで読んだか聞かれ、4分の一あたりをさした頃、イキナリ本を取り上げられ最近出てきた登場人物の名前を言えと言われた。
あらすじは知っていても、細かなデティールは再現できるはずもなく。
結局ゲンコツ→倉庫コースを辿り、翌日には大人しく【僕は王様】を読む3年生らしい私がいた。
宿題はめんどくさかったけど、昼からはずっと出ずっぱりで帰ってこず、真っ黒になるまで思いっきり遊んだり、お昼ご飯の素麺にブーイングを出したり、小学校のプールで水中カンフーをあみ出し鼻血が出るまで戦ったり、近所の神社の裏山にある獣道を辿った先に無人プールを見つけ(後に某銀行の保養所だった事が判明)、フェンスがあまりにも高かったので2日がかりで下に穴をほり、子供一人やっと通れる抜け道を作り服のまま泳いだり、線路をどこまで歩いていけるか試そうとしたとたん後ろからきた電車が急停車したので慌てて逃げたり、小学校のトイレにあった空気口?みたいな奴に入り込んでスパイごっこをしてたら迷子になりかけてものすごく怒られたりと、毎日が楽しく目まぐるしく過ぎていった。
夏休の自由工作に、ダンボールで家を作ると言い出したダイちゃん。いまいちどんくさいのを見かねてお父さんが手伝い出したら何時しかノリノリになり、とても子供では手におえない立派なごつい城のような物を作ってしまい、玄関はおろか階段すらも通らないような大作だった為急遽解体し、一部折りたたみ・取り外し・組立可能なオブジェとなり、悪乗りした私にセンスゼロのサイケなペインティングを施された。そのなんだか分からないけど迫力だけはある見事な出来に押されたのか、全学年の中から【大変よく出来たで賞】(大賞)をとってしまい、申し訳なさでブルブルするダイちゃんを尻目にご満悦だったお父さん。
その年の夏、私たちの間で【関取!】というギャグが熱病のように大流行。
何の脈略もないところでイキナリ半ズボンとパンツを一気にお尻に食い込ませるという、大胆で知性の欠片もない荒技に皆大爆笑。男ばかりの幼馴染のなかさすがにそれは辞退した私だが、ずっと笑うばかりの立場の自分に憤りを感じた。
そんなある日、また宿題の不正がばれ、いよいよゲンコツを食らおうかという瞬間。
私は一度やってみたかったという憧れと、ゲンコツを喰らう前の奇襲攻撃として、やおらスカートを捲り上げ、パンツを食い込ませ、「関取!!」と声高に父に宣言し披露して見せた。
放りこまれた倉庫はムシムシしてとても暑かったが、それ以上に腫れるほどひっぱたかれたお尻が焼けるように熱くて、座ることも出来ず中腰のまま私はシクシクと泣きつづけた。
そんな大騒ぎの夏休の宿題だが、よく漫画とかで31日に皆で必死になってやってる奴を見て、よくやるよと子供ながらにあきれていた。(おもにカツオ君とか)
実は私は最初の夏休の宿題申告を少なめに父親に提出、31日時点で申告漏れして出来上がってない宿題があったがさらりと無視。新学期が終ってものらりくらりといって逃げ、提出しないまま終る宿題もいくつかあった。
先日その事を彼に思い出話として話したら、もし君に子供が出来たらその話だけは絶対しないでくれとビックリする程真剣に懇願され、墓場まで持っていってくれとまで言われた。ご丁寧に。3回ぐらい念押しで。
あの時ちゃちい宿題をしなかったばかりに、こんなくだらない話を墓場まで持っていかなくてはならないという、
人生で一番情けない宿題を授かってしまった。
長い、感動的なお話でしたが、ボクの心に残ったのは何故Tバックがダメなのかという疑問だけでした。
それはたおやかな女性だからです。
関取後遺症ともいいます。
・・・娘に「関取!」やられてもきちんと指導するお父様に感服。<br>私なら凹みはしても、お尻はたいたりできないと思ふ。
ちなみにわたしも提出しないまま終る宿題いっぱいありました。<br>動かせそうにないタンスの裏側とか下側とかに隠してた。
つまり、「関取」を叱責されたトラウマが、現在Tバックを履けなくしていると。
お尻ものすごく腫れた覚えがあるんですよ。怖いんですよ。あと食い込むのが気持ち悪いんですよ。
そんな話を彼にしたところ、「ああ、スパンキングね。」と言われました。ゲームしながらサラリと。
「おはようスパンキング」
お!そうくると爽やかだね。
チョッピりドジでおっちょこちょいだけど憎めない可愛いスパンキング。<br>つか、ペット(オーバーホール着て歩いてるけど)にスパンキングと名づける女子中学生。