チナウ
2002-09-08 (日) キンキュウレンラク。 [長年日記]
■ イヤ、キンキュウってほどのもんでも・・・
えー、ただいま北の国から週間に入っていますが、
この金土であった最新のはまだみていません。
全巻ビデオで観てからみるつもりです。
なのでネタばれはかんべんな。
ってかアルフィー、メール怖くて読めないんだけど、
ネタバレじゃないよね。
開けて大丈夫なの?
まさかネタバレ爆弾?
アルフィーにはたかったり酔っ払って絡んだりいろいろしたからここらで仕返しされるのかもしれません。
ションボリ。
■ こんな日もあるんだな。
トム君がワインをたらふく飲ませてくれると言うので、金曜日はそうそうに仕事を切り上げトム君の店へ。
ついたそうそうシャンプー台に乗せられ、髪を洗われ、カットされ、トリートメントされました。
「イヤ、あんたあまりにも小汚かったから。」
・・・あっそ。
おかげで様でバシバシだった毛先もぴんぴんに跳ねていた後ろもサッパリこぎれいにしていただきましたよ。
金は払わんからな。
トム君とお店の後輩マヤちゃん、ケンタくんといっしょに青山へ。
なんか、トム君の知り合いのパーティでしたが、未だにナンのパーティだったかサッパリ分りませんでした。
店は路地の入り組んだところにありました。
はて、ここはなんだか見覚えが。
思い出しました。
3年ほど前、バイトしていた店のインド人のオーナーに連れてきてもらった店です。
3階が会員制のバーになっていて、そこのオーナーシェフが知りあいだったのです。
ついてそうそう店に飛びこむ私。いたいた。いましたよ。
「はーいダーン!!!アローハ!!!(←なんかちがう。しかも相手イタリア人だし。)
「オー!!!トノサマー!!!」
初めて彼にあったひは、そのインド料理屋のハロウィンパーティーの日で、私はちょんまげヅラをかぶっていたのです。
「元気だった?ちょっとファットになった?ダン。」
「オーチョットネ。トノサマハアイカワラズネ。」
抱きあう私達に唖然とする3人。
「ってか、トノサマって・・・・・」
とりあえずトム君達にダンを紹介しました。
その日のパーティーはダンの店の1階に入っているパーティースペースだったので、
あとでバーに行ってもいいかと言うと快くOKをもらいました。
キヒヒヒヒ。(たくらみ中)
パーティー会場に入ると入り口に、なんだか見過ごせない名前の御店からお花が届いていました。
私の記憶のどこかに、何かがひっかかります。
思い出すより早く、会場には信じられないくらい懐かしい人が。
6年ほど前、私が大阪にいたときに一瞬だけつきあっていて、その後は細々と連絡を取り合っている野口でした。
「野口?!!!!」
「!!!!!トモ吉?!!!!」
そこで思い出しました。
入り口においてあった送られた花。あれ、野口が勤める美容院の名前でした。
ゲホー!!!懐かしい!!!!
「おー、お前元気かよ。何年振り?」
「3年ぶりぐらいだよね。」
相方に知り合う半年ほど前、大阪に帰ったとき彼に会いました。
そのときも3年ぶりくらいの再会でした。
会う前日まで私はドキドキしていました。
女の3年。老けたかなーとか何度も言いながら鏡を覗き、
丁寧にパックとマッサージを繰り返してベットに入りましたがちっとも眠れませんでした。
その頃の私は人生で最上級にやせていた時代だったので、それを慰めに自分を励まし会いに行きました。
「あれからさあ、正直に言うよ。8キロ太ったよ。テヘ。」
「いいんじゃないの?お前あの頃やせすぎてて、頬がこけてて怖かったよ。
今ぐらいがちょうどいいんじゃないの。」
相変わらずのたらしっぷりです。
「なんで野口こんなところいるの?」
「ああ、こんどボスがこっちに店出すからその挨拶と、まあ親睦を深めに。
お前こそなんでいるの?」
「あ、友達にたらふくワイン飲ませてやるって連れて来てもらったの。」
またもやトム君たちに紹介しました。
「今ね、私の髪切ってくれてるトムくん。」
「はじめまして。」
そんな感じで自然と私達と野口とで一緒にまったりすることになりました。
私は美容業界なんてまったく興味がないし分からないので、
ずっとワインを飲んで肉をアニアニしていました。
ローストビーフを噛んでいる私の、口の端についたソースを野口が親指でぬぐってなめたら、
皆の空気が一瞬凍りついています。
そらそうだな。でもね、コイツだれにでもやるのよこおゆうこと。
トム君が口を開いた。
「野口さんはトモ吉が大阪にいたときにお客としてしりあったんですか?」
「ん?イヤ、クラブでナンパだな。」
「だな。」アニアニ
「そういえばオレ、お前の髪いじった事ないな。ホテルで髪洗ってやった事はあるけど。」
ブホッ
まあ私も30ですよ。色々あって当然だし、今更恥ずかしくもないですが、
あまり親しくないマヤちゃんの前ではやめれ。っつか、ヤツ、赤くなるマヤちゃんみて完全に面白がっていってます。
マヤちゃんもウブすぎ。
その後もトム君はずっと野口と話しこんでいました。
なんだかんだといって連絡先の交換もしたようです。
その後野口は他の同業者に連れて行かれ、トム君も忙しそうにうろうろしては、
新しいワインが開くたびにマメに私たちのテーブルに持ってきてくれました。
帰りダンの店に行こうとしたら、トム君はマヤちゃんとケンタくんを先に返しちゃいました。
「一緒に行けはいいのに。」
「あー、もうつかれたからゆっくりしようや。子守りはおしまいで。
野口さんは呼ばないの?」
「あー、後でね。ずいぶん気に入ったんだね。」
「べつに。」
それからダンのバーで飲みなおしました。
「どれくらい野口さんと付き合ってたの?」
「あー、1ヶ月くらいかな。でもその間もあいつ絶対他に女いたとおもうし。」
「なんで別れたの?」
「あの女好きにはつきあってられないからです。ってか、野口はやめとけ。」
「!!!!はぁ?!!!なにいってんの?!!!」
「ありゃすごい女好きだし。」
野口は気まぐれで女ったらしでとてつもなく不誠実で、適当でウソツキでどうしようもないヤツでした。
でも私はあいつの色素の薄い目や髪や大きな手で包まれると、そんなことはどうでも良くなってしまっていました。
つまりあれだ、若かったのだ。私も。ヤツも。
野口の母親はすごく若くして彼を生んだ。
そしてすぐ離婚して彼を連れて郷へかえった。
しかし1年もしないうちに再婚し、彼を自分の母親に預けて大阪へ行ってしまった。
野口がまだ2歳にもならないころ。
物心ついた頃から、彼の側には年老いた祖母しかいなかった。
その後一度も彼は母親に会ったことがない。
その事実を知ったのは私達が付き合うのをやめ友達になってからだ。
知り合った頃彼は妹と同居していると言っていた。
はなから妹なんていない。
私と会っているときも女と暮らしていたのだ。
その事を3年前思いで話しのようにいうと、
「あれ?オレ妹と暮らしてるなんていったっけ?」
と、ケロっとしらばっくれた。確信犯の目で、笑いながら。
私はそれ以上問いたださず彼の腕枕の中で眠った。
「あの、女好きはなおらん。そのくせヤツは誰か一人の女性と幸せになるとか、ましてや結婚して子供を作る事なんか、
まったく想像できないんだよ。」
私はさっき野口と交わした会話を思い出した。
「明日用事あんの?なかったらこの後ゆっくりのもうや。」
「明日町内会のお祭りいくねん。」
「祭り?」
「ぜったいヤキソバとアンズアメは食うんじゃ。」
「平和だね。」
「ってか、結婚すんの。私。」
「マジで?!!ケッサク。」
「あんた、ケッサクって。アイツらしくて笑うわ。」
「あのさあ、トモ吉自身も良くウソのサンパチっていうじゃん。ウソつくときは3と8がよくでるってやつ。
きょうはやたら3を乱発してない?」
「だな。」
今日はいつも御世話になっているトムくんを偶然とはいえこのバーに連れてこれて良かった。
ここはお客サンもモデルさんとかが多いし、バイトしているおとこのこもすごく綺麗。
本当は綺麗な人に囲まれてちょっと落ちつかないけど、でもいいのだ。
ダンはゲイで、その仲間たちは皆優しそうだ。
「ダンと仲良くなればここの会員としていれてくれるよ。」
「オレの給料じゃむりだよ。」
でも結局トム君はダンとも仲良くなり、多分、また、私の知らないところでここにくるんだと思う。
私はお金ないし、小汚いからムリだけどな。
「トモ吉がよくいうずっと夢に出てくる人?あの人。」
「まさか。全然。」
「そうだと思った。」
そうじゃないからイキナリでも会える。
その人だったら、私はきっとその場から逃げ出す。
そんなもんじゃない。まだだめだ。まだ。
トム君が野口に電話してみてたけど留守電だった。
一応帰る前もういちど1階をのぞいた。
どうやらヤツは女の子ときえたらしい。やっぱりな。
野口もトム君もまだこの世の唯一がみつからずうろうろしている。
ってかこの世にそもそも唯一のものなんてあるのだろうか。
多分、思うんだけど。
そんなものはこの世に存在しない。
あるとしたら自分にとっての自分自身だけで、まったくの他人となるとこれはもうムリだ。
「トモ吉はウソツキだから。ほんとあんた、適当だよね。」
うん、そうだね。
ウソツキを公言する事で私は逃げ込み、捕まえられないようにする事で相手を安心させる。
それはいい意味で適当な関係だからだと思う。責任のない。
「トム君、野口をプライベートな時間捕まえたかったら束縛しない事、待たないこと、期待しない事だ。」
「はあ、何それ。」
「今日の私教授みたいでいいかんじ。」
「てきとうだな。」
「だな。」
私と野口は似ているところもたくさんあった。
ただ私はラッキーな事に、人を好きになって一緒にいることに抵抗がなかった。
好きになられることは幸せな事だったし、人を好きになることも得意だった。
ホレっぽい所だって、私の数少ない才能のひとつだと思っている。エヘン。
今度は育て名人になりたいところだ。
帰り際マヤちゃんからトム君に電話があった。
ほっぺの赤いまだあどけなさの残る彼女の横顔を私はぼんやり思い出した。
ここにも迷走しながらも目指す先はしっかり決まっている人がいる。
がんばれ、マヤちゃん。
泣いても笑っても人生は一回こっきりなのだ。
私もやっとひとつ目の角を曲がったよ。