チナウ
2003-07-11 (金) 張り切って張り切って。 [長年日記]
■ 空回りした瞬間の静寂。
この前の土曜日、とあるデートスポット(デートスポットて。)へ行ってきた。
そこにとても大きな笹が置いてあり、沢山の短冊と色とりどりのマジックがあった。
デートスポットという事もあり、たいがいの短冊は似たような内容だ。
コウジとずっと一緒にいられますように。
ハルカ☆マサヤ いつか結婚しようね。
それを見て彼が、間違っとると憤慨していた。
本来七夕の短冊には厄除けのような意味があり、病気とかそういうものを祓うために書くものらしい。
若いのにおっさんくさいやっちゃとまともに聞いてなかったので自信がないが、確かそんな感じだったとおもう。
そんな夢のない彼をおいて、私はイッチョ気のきいたラブーなことでもこれ見よがしに書いてやろうかと張り切った。
張り切ると決まって空まわり。
ふと天から声が降ってきた。
神様、私に何を伝えたいのでしょうか。
短冊に張り切って何かを書き込もうとしていた私の脳裏に、小学5年生の頃の記憶がよみがえった。
小学5年生。この微妙なお年頃。
私たちの時代の女子たちは、この頃から大人のお印を貰い始める事が多かった。
高学年とも呼ばれる年ともなると、時間割に魅惑な授業が登場する。
保健体育。
保険なの?体育なの?
うすうす分かっているくせに、そんなことをささやきあいながら時間割を受け取った1学期。
あの頃の甘酸っぱさを、私は今も忘れない。
そして梅雨も明けた、そうコレくらいの時期。魅惑の授業が動き始めた。
保健体育 + 授業参観
この最強コンボが何を意味するのか。その頃神童と呼ばれていた私には充分すぎるほど読めていた。
1週間前に配られた授業参観のプリント。ソコには神秘の世界が繰り広げられていた。
ご父兄の皆様
当日の授業は保健体育を予定しております。
体の仕組み、初潮の説明等大切な授業を行いますので、必ずご出席ください。
そしていよいよ明日は授業参観という日。
おわりの会に保健室の先生が颯爽と現れた。
白衣もまぶしいおばあちゃん先生は私たちをゆっくりと見回し、一つの宿題を出す。
「みなさん。明日の授業業参観は、私が行います。
そこで皆さんに大切な宿題を出しておきます。
明日は皆鉛筆を1本、削ってよく尖らしておいてください。
これは明日の授業で大変必要なものなので、必ず忘れないようにしてくださいね。
ぴんぴんに尖らせてくださいね。」
ぴんぴんに尖らせる。
そんな言葉一つにも性的なものを感じてしまうほど、当時の私たちは敏感になっていた。
ぴんぴん。ぴんぴん。とんがり。
そして迎えた当日。
皆おもいおもいのぴんぴんの基準で鉛筆をとんがらせて参りました。
今まで宿題をしてきたのを見たことないと評判のデブ豆腐屋のタっちゃんも、この日ばかりは鉛筆を5本全てぴんぴんに尖らせ、
他の授業中どれも使いたくないと駄々をこねるというパフォーマンスを見せてくれました。
この日のために花柄の鉛筆キャップを買い揃えたカズヨちゃん。
鉛筆だけカバンに入れず、ハンカチに包んで手で持ってきたヒロシ。
鉛筆削りごともってきてしまいコンセント確保に大忙しのハヤシ。
いや、手で削るパターンの鉛筆削りのほうがいいとそっちを持ってきたヒコちゃん。
もちろん当時学校始まって以来の天才といわれたワタクシも、手先が器用だった父親に頼んで手で削ってもらい、
芯のところだけでゆうに3センチはある見事な鉛筆を持ち込んでおりました。
とがった先が折れないように、ティッシュを巻いてキャップを手作りするあたりもぬかりありません。
そしていよいよ授業開始。
父兄の皆様も教室に溢れてまいりました。
まずは簡単な質疑応答(男の子と女の子の違いは?とか。)のあと、おしべだとかめしべだとかの説明。
そんな生ぬるい拍子抜けする事業が進む中、私たちは鉛筆1本に全ての神経を注いでおりました。
おしべとめしべで・・・花が実をむすび・・・それが赤ちゃんで・・・
そのあたりでクラス全員が後ろを振り返ります。
そこには妊娠8週目に入ってボールのようなおなかをした増田君のお母さんが恥ずかしげに立っています。
それまで11歳離れた兄弟ができると自慢していた一人っ子の増田君。
お父さんがおしべでお母さんがめしべだったのかと呆然としています。
少年よ。大志を抱け。
そんな涙目の増田君と、そのお母さんを辱める目線を向ける我々に気が付いた先生が、いよいよ本題に入ります。
「みなさん。鉛筆は尖らせて来ましたか?」
キターーーーー!!!
前の時間に電源を確保して改めて尖らせたハヤシ。
ものすごいスピードで手動の鉛筆削りを回していたヒコちゃん。
5本のうちどれを使えばいいのかいまだに悩んでいるタっちゃん。
ゆっくりと手製のティッシュキャップを外す私。
さあこいっっ!!こいこいっっ!!
「じゃあその尖った鉛筆で、ノートに点をつけてください。
ちょっとノートに押し当てるだけですよ。」
折れないように細心の注意を払う生徒たち。
こんなに静かな授業、後にも先にもこのときだけでした。
それぞれのノートには、本人しか確認できないような小さな小さな点が。
「はーい。
それが女の子のおなかの中にあるタマゴの大きさです。」
・・・・・。
「では次のページです。
動物には哺乳類と・・・・・」
・・・・・え、それだけッッ?!!
一同呆然とするなか、先生は授業を進めて行きました。
私はかつてこれほどの静寂を知りませんでした。
机の上に置いている鉛筆削りを見つめ頬を染めるハヤシとヒコちゃん。
花柄の鉛筆キャップを指にはめてれくささをごまかすカズヨちゃん。
5本の鉛筆を握り締めたまま呆然とするタっちゃん。
いまだ母親を恨めしそうに見つめる増田君。
私が3センチの鉛筆の芯をそっと机の下で折った音がかすかに教室に響きました。
なにか少し違う意味で大人になってしまった私たち。
思えば純粋とか素直とか、そんなものたちを無くしてしまった瞬間だったのかもしれません・・・。
そんなことを思い出してしまった私。
張り切っちゃダメ。特別な事をしようとしちゃだめ。
そうつぶやきながら短冊2つに願い事を書き込み、控えめに下のほうの枝にくくりつけました。
両親が健康で寝たきりとか介護とかそんなことになりませんように
弟たちがそれぞれ自立して迷惑とかかけてきませんように
圧倒的にピンクの短冊が多いなか、私の控えめなこげちゃの短冊は余計に目立ってしまったのでした。
帰り彼に食事に連れて行ってもらったとき、年に一度といわず毎日会える自分たちに感謝しました。
ええ。
その日の私は、とても。とてもとても謙虚でした。
ちなみに七夕当日、東京は雨でした。
ざまみろ。
保険??トモ吉はなんの保険教育を受けたのだ?性病?性犯罪?男をレイプそれともセクハラ?慰謝料を請求できるようにその筋に顔つなぎする方法とか(笑。<br>七夕さまのお願い、せつなすぎ。他人の夢を食い散らかしてきたトモ吉にはロマンが残ってないのか。
わりぃわりぃ。
ダッシュでなおちた。
もう一カ所【保険】を残して置いてくれる所がチムニーらしくて、愛してます。
マジ?もういいやめんどくせぇ。
のどかわいたからジュース買いにいこ。