チナウ
2003-12-19 (金) 弱肉強食 [長年日記]
■ 血縁の濃さと薄さ。
ここにも何度か登場しているのですが、私には弟が2人おります。
3つ下のダイちゃん。5つ下のユウちゃんです。
同じ家庭、同じ環境に育ってもこんなにも違うものかと言うくらい、2人の性格はちがいます。
温厚な性格でいつもニコニコ潤滑油役のダイちゃん。
いつも誰かしらとケンカして家に相手の親が文句を言いに来ていたユウちゃん。
優しそうな笑顔で近所のお年寄りから愛されていたダイちゃん。
まだ若い目のオバちゃんたちから熱烈な支持を受けていたユウちゃん。
がっしりした体格に野球部の朝練にいそしんでいたダイちゃん。
現代人ぽく手足が長く伸びバスケ部に入ったユウちゃん。
のりぴーをこよなく愛し、おニャンコファンだったダイちゃん。
小学5年生の頃CMに出ていたモデルに一目ぼれ、その後は観月ありさや内田ゆきが好きだったユウちゃん。
これに私が加わると、当時国民的人気者だったトリオにそっくりなのです。
ダイちゃん=ベム。ユウちゃん=ベロ。私=ベラ。親もなっとくのそっくり。妖怪人間やで母ちゃん、怒れや。
しょっちゅうケンカをしていたけれど、基本的に仲の良かった私たちでした。
世はクリスマス。
私とダイちゃんは大学生、ユウちゃんは高校生になっておりました。
確か祭日でございました。昼前に玄関のチャイムがなります。
誰かと思ったら可憐な女子高生が、ぶるぶる震えながら立っております。ユウちゃんにクリスマスプレゼントを持ってきたようです。
まだ寝ていたユウちゃんを起こしたところ、やつは玄関から顔だけ出してプレゼントを受け取り、その女の子を返してしまったのです。
私とダイちゃんブーイング。お茶ぐらい出してあげればいいのにー!!
ユウちゃんは気にもとめません。1時間ほどして又別の女の子がプレゼントを持ってやって来ましたが同じ対応です。
それどころか、後々まで我が家に語り継がれる名言を吐いたのです。
「俺クリスマスだいすき!だってずっとパジャマでいても怒られへんねんもん。」
いつそんなルールが?!!
この浮かれた日本で、クリスマスの意味をここまで俺流に解釈している人間がいるでしょうか。独創的過ぎでイエスもガックリ。死んでも死にきれません。
ユウちゃんはその後もその発言通り、1日中パジャマで通すのです。
いつもなら許されないこの暴挙も、母親によって許されます。
クリスマスになるといそいそと出かけてしまう私とダイちゃん。それに比べれば無邪気に家にいるユウちゃんを優遇するのは仕方の無い事かもしれません。
アホらしくなって出かけようとする私とダイちゃんに、ユウちゃん痛恨の一言。
「え?!出かけるの?!!クリスマスパーティーしないの?!!」
・・・・高校生のセリフか・・・。
「あれだぞ。ケーキだけじゃないぞ。アイスクリームケーキも買ってくるって親父いってたぞ!」
ダイちゃんと2人、かわいそうな弟を優しく見つめながら外出しました。
そういえば兄弟の中で甘党なのはユウちゃんだけでした。その後もそれは変わらず、私とダイちゃんは酒好き、ユウちゃんはカシスでお付き合いと言う図式が成り立つのです。
そのクリスマスの帰り、ダイちゃんに電話したら彼もちょうど家に向かっている所だったので、駅で待ち合わせをし車で拾ってもらいました。
ダイちゃんの彼女は家が厳しく門限があったため、10時ごろの帰宅でした。
玄関を開けるとそこには、大きなホールケーキ2個を前に難しい顔をしているユウちゃんがおりました。
ケーキは6等分にされております。我が家は5人家族です。
「あ!今帰ってきてもダメだぞ!!俺が2個づつ4個食べるんだからな!!」
唇をチキンの脂でテラテラさせたユウちゃんが威嚇してきます。とらんて。
お父さんもお母さんもそーだそーだとこちらを責めてきます。だからいらんて。
しかもユウちゃん、4個も食べるくせに、更にでかいピースを取ろうと悩んでいたのです。
「かあちゃん均等すぎだよぉ・・・。」
悲しげにつぶやくユウちゃんに、私とダイちゃんは私たちの分も食べていいよと言ってあげました。
ユウちゃん大喜びです。
私たちのために取っておいてくれたチキンを軽くつまみつつ、改めてシャンパンで乾杯です。
ユウちゃん、よかったね。
ふと階段のあたりを見ると、色とりどりのプレゼントが合計6個。色んな女の子がわざわざもってきてくれたそうです。
別に男前でもなんでもないのになんで奴ばかりが・・・。ダイちゃんの慟哭を私は聞き逃しませんでした。
翌日いつまでたってもプレゼントは放置され、ユウちゃんは私達からもらったケーキを大切に大切に冷蔵庫に保管し、ゆっくり味わって食べていました。
どんなに心のこもったプレゼントでも、相手が自分に興味を持っていなかったらゴミになってしまうんだという理不尽さを、この能天気な弟が教えてくれました。
今年もまもなくクリスマスがやってきます。
ユウちゃんも東京に出てきて10年近く経ちます。どんな思い出を作ってきたのでしょうか。
そんな私にユウちゃんからメールが。なになに。
俺の誕生日プレゼント5000円だけかよ。姉ちゃんシケシケだな。 まあいいや。お正月帰るだろ? ゆっくり投資してもらいます。 そうそうまた太ったんだって? 最悪だな。
誰かあのダミアン消してくれ・・・。