チナウ
2004-12-15 (水) 愛に生きる、その時君は暴走列車。④ [長年日記]
■ 先駆け☆俺俺サギ!
はせやんのくどくて雑なアピールに、さすがの私もうんざりしはじめた。
のみに誘う事もヘリ、帰宅時は忍者のごとく自分の部屋に滑り込む私。
そんなことお構いなしに、はせやんの愉快メールは途切れることなく送られてきた。
あの日はキョウちゃんたちと、新宿で飲んでいた。
早い時間から呑んでいたので、いい加減ほろ酔いだった私たちは、次の店を探すべく眠らない町歌舞伎町を闊歩していた。
キョウちゃんも一つの芝居が終った所で、その場にいた芝居関係者たちも含め大変リラックスしたムードが漂っていた。
いい酒だった。
の、はずだった。
先日終ったばかりの芝居の話になり、キョウちゃんがそういえばと言い出しはせやんの話になった。
キョウちゃんもまだ東京にきて間もないころで友人も少なく、無名役者にありがちなチケットノルマに悩まされていた。
私は友人たちを大量に引き連れて、キョウちゃん芝居を見に行った。その中に、キョウちゃんを知らないながらも参加してくれたはせやんがいた。
律儀なキョウちゃんは、ぜひお礼が言いたいと言い出し、私に電話するよう言い出した。
チョッピリ躊躇したが、私も酔っ払っていたのでまいっかとかけてみた。
ワンコールではせやんがものっそ明るい声で出た。
「はいは〜い☆トモ?トモ?電話くれるん久しぶりやんかぁ〜☆いまどこいまどこ?呑みに行くん?」
「いや、あのさぁ、この前一緒に行ってくれた芝居、あの時出てた友達のキョウちゃんが、はせやんにお礼いいたいんやって。」
さっさとキョウちゃんにかわり、私はまた他のメンバーとバカ話をしながら呑み始めた。
最初は御礼を言っていたキョウちゃん。しかし、徐々に雲行きが変わりだし、キョウちゃんの表情に困惑の色が浮かんだ。
いや、トモはやめといたほうがとか何とか言い出してる。何何?悪口?
「ねえトモ・・・なんか、はせやんがトモのこと好きとかどうとかいってるよ・・・。」
ウンザリしながら電話をかわった。もしもーし。
「トモがぁ・・・・好きなのッッ!!!」
ものすごい絶叫が電話から飛び出た。耳が痛い。なにしてくれんねん。
「なぁ・・・いまどこ?僕も先輩と飲んでるんやけど、そっちいくから。」
・・・酔っ払ってやがる。
はいはいと適当な事を言って電話を切った。
周りが好奇心の目で見るので、今までの経緯を話すが信じてくれず。嘘や、ネタやろを連発。
何が悲しゅうて一般素人がネタくらなあかんねん。
その後はその話を打ち切り、気を取り直してかなりご機嫌に皆で飲んだ。
そして楽しい余韻のままお開きなった。
帰りの電車を待つ間、ふと携帯を見ると着信が9件。すべてはせやん。
ウンザリしてるとまた携帯がブルブル言い出した。思わずとってしまう私。もしもし。
「トモぉ・・・いまどこぉ・・・」
「新宿。つか、電車くるから切るよ。」
「今から帰ってくるん?」
「そうだよ。」
「よかったぁ・・・お泊りじゃないねんな。男の声もしたから、もしお泊りやったらどうしようかと思ったら寝られんくなって・・」
「あー、電車くるから切るよ。」
「よかったぁ、よかったぁ、そこにおり、迎えにいったるわ。」
「いや、他の友達の家によるからいい。」
「それ男?それ男?!!お泊りなん?トモそいつと色んな事するん?」
思わずきもちわるさとむかつきで電話を切る私。
直後又電話がブルブル。
怒鳴ってやろうかと電話を取ると、はせやんの一言。
「今電話切れちゃったね☆電波悪いね☆」
「切ったんです。」 ブチッ!
電話を切り電源も切った私は、真っ直ぐ帰るのもなんだか怖くてキンキンを叩きおこし、朝方まで呑んだ。
翌日、さすがに二日酔い気味の私は、今日こそは早く帰ろうと家路を急いでいた。
そこに又はせやんから電話が。
かかってきた電話を無視できない私は、仕方なく電話に出た。もしもーし。
「あ、俺。俺俺。わかる?」
携帯は明らかにはせやんの番号を着信してるのに、イキナリ知らないなれなれしい男がでた。
「・・・どちら様でしょうか。」
「えー、わかんないのぉ・・つめたいなぁ・・俺だよ俺!」
私はこの手の電話が大嫌いだ。相手を試すように名前を言わない奴なんかとは元々友達になりたくないので、こんな奴絶対私の知り合いではない。
つか、はせやんの電話だし。
「ねえ、思い出した?トモ。」
なれなれしく名前を呼ばれ、ブチぎれそうになった。
その時電話の向うで、遠くから叫ぶはせやんの必死な声が、とぎれとぎれ聞こえてきた。
「先輩〜ほんまにやめてくださいよ〜!!携帯、返してくださいよぉ・・・」
はせやんもはせやんなら、この先輩も先輩だ。ああ・・・ぶん殴りたい・・・。
しかし私も社会人の端くれ、こんなくだらなく最悪な先輩相手でも、仕事を円滑に進めるには我慢しなくてはならないのが大人社会というもの。
そんな風にチョッピリはせやんに同情しつつ、私はなるべく冷静にはなした。
「ああ、はせがわさんの先輩さんですか。どうもはじめまして。」
「ちぇえ〜わかっちゃったか。今何してるの?」
「仕事中です(嘘)」
「今はせがわ達と呑んでるんだ、君もおいでよ。」
「ごめんなさい、今日は何時に終るかわかんないんですよ。」
そこでやっとはせやんが携帯を奪い返したようだった。
「ごめんねごめんねトモ、先輩がムリヤリ・・・」
「ああいいよ。」
「トモのことはなしたら呼べってうるさくて・・・ごめんねごめんね!」
「もういいから。切るよ。」
「ねえねえトモ、今から合流する?」
「しません。あのね、私そういう電話かけてくる男本当は大嫌いだから、そんな先輩と呑みたくないの。」
「ごめんねごめんねごめんね・・」
「いや、はせやんも辛い所だよね。まあそういうわけだから。」
「じゃあボクだけ抜け出そうか?迎えに行こうか?」
「結構です。」
電話を切った後も正直むかつきは消えなかったが、はせやんもバカな先輩を持って気の毒といえば気の毒だなと思いつつ怒りを納めた。
が。
甘かった。
翌日の夜、もうそろそろ仕事を切り上げ帰ろうかと言う時間に、又私の携帯がはせやんの番号を着信した。
昨日のわびかなと思いつつ電話に出た。甘かった。
「もしもし?俺俺。分かる?」
またかよ。
「もしもし?俺だよ。元気?」
しかも昨日の先輩とは明らかに違う人間ですよ。なにこれ。
「あの・・・どちらにおかけですか?」
「うわ?!おこってる?!ごめんごめん、はせがわにかわるよ。」
・・・・・。
「ごめんなぁ〜ともぉ〜☆
幼馴染のま〜くんでしたぁ☆今飲んでるねん。トモも合流できないかとおもってぇ☆」
「あのさ。私昨日そういう電話大嫌いって言ったよね。」
「あれ?おこってる?ごめんごめんごめん、お・こ・ら・な・い・で☆」
「切るよ。」
「ねえねえ、本当においでよ☆まあくん、歌もうまいねん☆」
ブチッ
思わず電話を切る私。こいつ、全然反省してない・・・というか、分かってない。
その直後またはせやんから電話。
いい加減にしろといいかけたら・・・
「もしもし?俺俺。分かる?」
「・・・・・。」
「って、何回もいってもおもしろくなかった?」
「・・・・・。」
「いや、あいつがトモさん好きだとか色々言うから、電話かけて欲しそうだったから俺・・・」
「・・・はせがわ君とかわってください。(激怒)」
「はせがわ、なんか彼女怒ってるぞ!アハハ」
「トモ?ごめんごめん、まあくんが強引に・・・」
「すぐ来い。」
「え?」
「よく皆で集まる、駅前のあの居酒屋へ、今すぐ来い。」
「あの半地下の?!いくいくいく!!ヤター!!」
「いいからさっさとこい。30分以内。それ以上は待たん。」
電話を切っても怒りがさめない。もう限界だ。ココはガツンと本人に言うに限る。
なめられてる、確実になめられてる。
帰り支度をはじめた私にまたはせやんから電話が。
「ボク一人で行ってもいいのん?まあくん連れてったほうがいい?」
「いいから一人で来い。」
「デートみたいだね☆アハハ〜」
「うるさい。さっさと来いよ。」
「もう店の前☆嬉しくてタクシー飛ばしちゃった☆」
早!
思わずダッシュで会社を出る私。
もうダメだ。避けて通っても仕方ない。ここはガツンと直接対決だ。
言いたいことは山ほどあるが、怒る気持ちで言葉がうまくでそうにない。冷静に冷静に。
そう自分に言い聞かせて、居酒屋の扉を開けた。
おなじみ散切り頭の下膨れ顔が輝くように笑って、ちぎれそうなほど手を振っている。
悪い奴ではない。
それは分かる。
だからって、許されるものでもない。
私は意を決してはせやんの方に向かった。
わずか数分で、この輝くような笑顔が豹変するとは思いもしないで・・・。
つづく。
こ、こ、こわい。そして次の展開が待ち遠しい。
ハニたん、やっとはせやん終りましたよ。<br>つらかった・・・。
こんな話引っ張ってとし越すなんてアホですわ。<br>今年の目標はだるい事から逃げない!<br><br>でもムリ。