チナウ
2005-06-07 (火) 旅立つ君へ。 [長年日記]
■ お土産は、ミミズの形のグミでした。最悪。
大学生の頃、キョウちゃんがグアムへ行く事になった。
キョウちゃん実は海外初体験という以前に、飛行機初体験だった。
友達思いの私とジュンコは、初飛行機だとドキドキするキョウちゃんが田舎者だとばれないよう、明日の旅立ちを控えアレコレ献身的にレクチャーした。
両親は九州出身なため、夏の田舎訪問では飛行機をタクシーのように使っていた私と(ごめん、見栄はった。)、実は10歳まで父親の仕事の都合でバンクーバーに住んでいたジュンコ。ここはひとはだ脱ごうではござらぬか。
キ 「ドキドキするな!窓際すわれるかな?!!」
ジュ 「あんた、スリッパ忘れるとか信じられないような凡ミスせぇへんといてよ。」
キ 「スリッパいるの?!!」
ジュ 「あったりまえやん!!ドキンだよドキン!!土足禁止!!」
キ 「そうなんだ!!」
ジュ 「飛行機は新幹線とちゃうねんよ?
長旅にも耐えられるように、毛足の長ーいカーペット敷き詰められてるんやからね。」
キ 「わかった!スリッパな!ありがとう、まったく考えへんかった。」
私 「まぁまぁ。初めてだと意外なこと気が付かないもんなんやね。
私たちが当たり前に思ってても意外に知らない事ってあるかもしれへんよ。
着陸の時のバンザイだって、お母さんにやらされて訳分からなかったもんね。」
キ 「バンザイ?!!」
私 「あれ?バンザイ知らん?!!ドラマとか飛行機のシーンとかで出てくることあるやん?」
キ 「テレビほとんど見ないし・・・」(←超アウトドア野性児)
私 「着陸する時に抵抗を少なくする為に、皆で手を高く上げなきゃいけないんだよ。
バンザイするみたいに。」
キ 「そうなんだー!!」
ジュ 「じゃあアンタ、離陸の拍手も知らんやろ。」
キ 「離陸の拍手?!!」
ジュ 「これはね、別に空気の抵抗とか安全上の問題とかじゃなくてね、言わば礼儀やな。
飛行機に命預けるわけやん。皆運命共同体やから、なんか儀式みたいなもん?
ヨロシク!がんばろう!みたいな。」
キ 「そうなん?!」
私 「だってアナウンスで機長の挨拶とかあるしね。」
キ 「なるほど!!」
ジュ 「あとチップもね。」
キ 「チップ?!!」
ジュ 「あんた、海外旅行でチップは常識やろ。
飛行機だって日本の国境越えた瞬間から外国やん。」
キ 「・・・そうなんだ・・・」
ジュ 「だから、離陸した直後にジュースとかもらっても全然問題ないんやけどね、
国境越えたらサービスしてもらうたびにチップ払わないかんよ。」
キ 「・・・どうしよう・・どっから国境越えたかなんて分からん・・・」
私 「だから機長の挨拶があるんやん!
何のためにスッチーがわざわざアテンションプリーズって英語で呼びかけると思ってんの。
合図やん。こっから外国ですよ、チップくださいよって、言うてるようなもんやん。」
キ 「なるほど!!」
ジュ 「いきなりチップとか言えへんしね。」
キ 「なるほどー・・・スマートなルール満載やなぁ飛行機って・・・」
ジュ 「窓際やったらいいね。赤道は絶対見ときよ。」
キ 「赤道って分かるもんなん?!」
ジュ 「あんた、赤道やで。赤い道!やで?」
キ 「?」
ジュ 「機内がなんかちょっと熱くなってきたかナァと思ったら下を見てご覧。
真っ直ぐに紅く染まる線がうっすら見えるから。」
キ 「赤いの?!!」
ジュ 「赤いっていうより、所々燃えてるねん。」
キ 「はぁ?!!!」
私 「ほら、あの赤道の部分って油田が広大に広がってるねん。暑いやろ?あのへん。
で、蒸気みたいにオイルが滲み出てるところに、あの気候で発火したりして所々燃えてるねん。
地上だけやけど、うっすら見えるからせっかくやから見とき。」
キ 「わかった!!」
さすがにそれは信じないだろうと思っていたが、散々自分の無知さを植え付けられたキョウちゃんは、この無理にも程があるデタラメをすんなり信じてしまった。これがマインドコントロールというものなのかは知らないが、赤道直下の国の人たち、ひいてはキョウちゃんのご両親にはこの場を借りてお詫びをしたい。
その後ももしスッチーがイスラムの人だったら、機内食「ビーフオアチキン?」と聞かれても、それは引っかけ問題だから元気よく「ベジタブル!」と答えなくてはいけないとか、そもそも手に握ったJALのチケットをゆっくり見つめて考え直せば矛盾点にアッサリ気が付くはずなのだが、翌日に控えた海外旅行という人生最大のイベントに舞い上がりきってるこの幸せな友人は疑うという機能を全て捨て、砂が水を吸収するように、私とジュンコの垂れ流すウソをガンガン吸収していった。
当日飛行場まで送っていく役を引き受けた私とジュンコ。
キョウちゃんは朝から元気に、
「グアムについたら何しにきたん?ってきかれるから、そしたら【斉藤寝具!】でいいねんやんな!!」
と練習に余念が無い。
スリッパもわざわざ家のリビングから持ってきた、チェックの立派過ぎる代物だった。それを手荷物にギュウギュウ詰め込む。笑いをこらえる私とジュンコ。
他の友人たちとも無事合流し、お土産買ってくるねと鼻息も粗く搭乗しようとするキョウちゃんを呼び止めるジュンコ。
ジュ 「窓際の席かもしれへんやろ?キャップもってきた?」
キ 「あ!キャップは持ってるけど手荷物に入れてない!!」
ジュ 「飛行機は雲の上やねんから、紫外線も半端じゃないよ。あっという間に染みそばかすだよ。」
キ 「どうしよう・・・・・」
ジュ 「・・・これ・・・もって行き・・・」
ジュンコがそっと差し出したものは、水泳用のゴムのキャップ。私、耐え切れずに大爆笑。
さすがに催眠術の解けたキョウちゃん、あ!あんたら!!色々だましたんでしょ!!どこまでがホンマなん?!!と騒ぎ出すも後の祭り。
他の友人達に連れられ消えていったのでした。
もちろん事前に事情は他の友人たちにも伝わり、当日のキョウちゃんの大変ハートウォーミングな行動が、後日逐一報告されました。
飛行機に乗る瞬間スリッパを取り出し履こうとし、人の流れを止めスッチーに苦笑いされるキョウちゃん。
離陸の瞬間ものすごい大きな音でパチンと手を鳴らしてしまったキョウちゃん。
機内食が来るも、「ビーフてゆうてもいい?なぁ、ビーフゆうてもいい?」と小声で泣きそうな目で友人に訪ねるキョウちゃん。
やっぱりあの子らウソばっかり言いやったんやと、鼻息も荒く怒るも、ついつい窓の下をキョロキョロして赤道を探してしまったり、着陸の時は手をあげかけたりとなかなか染み付いたウソを払拭する事が出来なかったキョウちゃん。
帰国後ものすごい勢いで襲い掛かられる私とジュンコ。
さて、そんな私たちも、一つだけ、とってもとっても大切なことをちゃんと教えておきました。
キ 「海外って物騒なんやろ?」
私・ジュ 「武器は絶対機内に持ち込んじゃダメ!!荷物にも入れない!!」
ひとつくらいは感謝されてもいいと思うの。
いつも楽しみにしてます。今月は恐いぐらいに切れ味が抜群!
ありがたいことでございます。あなたがお金持ちならぜひ友達になってください。ナムナム。
つか、キョウちゃんが切れてるってことでじゃね?
キタコレ。
残念ながらボンビーです。アーメン。
貧乏なら負けないぞ!住民税滞納のち給料差し押さえだ!!ヤタ!!
キタコレ。
いやっ〜キョウちゃんが他人事とは思えない今日この頃の僕ですよ。<br>わんぱくでもいいたくましく育ってほしい。