チナウ
2005-02-28 (月) で、結局。 [長年日記]
■ 食べ物の番組の話かよ。っていう。
テレビ東京はかっこいい。
オリンピックやワールドカップ、世界が熱狂するイベントに他局が飛びついても、
いつもマイペースにグルメや旅番組を放映している。
重大事件や政界の組織改変、世間の関心事が集中する情報に他局が飛びついても、
やっぱり呑気にラーメン特集なんかを放映している。
しかし、ただのマイペース呑気さんな局なのだろうか。
いや。違う。
テレビチャンピオンを見てもらっても、あの局のただならぬ仕事ぶりが見て取れるではないか。
一時期はやった大食い大会。
テレビチャンピオンの看板企画を、さっさと他局がパクってなにやら大げさなセットを作り、フードバトルと横文字に直し、挑戦者たちをカッコイイファイターに仕立て大当てした。
が、よく考えて欲しい。テレ東の作り出す大食い大会とフードバトルは、出演者が被れど企画内容がまったく違う。
いくらセットをかっこよくしようが、ドギャーンとかズガーンとか効果音を激しく鳴らそうが、テレ東の繰り出す企画には遠く足元にも及ばない。
いかに早く多く食べるかを、アングルを変え、セットを変え撮ろうとも、テレ東のロング巻寿司イッキ食いの迫力には叶わない。
台の上に置かれた5メートルはあろうかという巻寿司を、端からモクモクと食べていく。食べた長さで勝敗が決まる。
余計な効果音は一切無し。せいぜいポコポコとなる太鼓かドラ程度で、あとは学際のようなモールで縁取られたチープな看板と、司会者の持つ先端にすしやラーメンのミニチュアが引っ付いたマイク一つで番組が構成される。
寿司を頬張る女性チャンプ赤坂さんの顔がアップになる。鼻水が垂れている。そんなあられもないフェイスのアップに寿司のミニチュアがついたマイクがチラチラ被る。司会者の大げさな蝶ネクタイのキラキラが被る。
最初はただのおばはんだった赤坂さんが、回を増すごとに微妙におしゃれに気を使い出す。
女性チャンプ大会では、決勝戦で参加者全員がウェディングドレス姿でケーキを食べた。赤坂さんも強風の中ウェディングベールをなびかせ、ものすごい勢いでケーキを頬張る。
顔中ケーキだらけにした赤坂さんに、司会者がウェディングドレス姿を誉めると、ケーキの間から一瞬乙女のような恥じらいをみせる。
ドラマだ。そこにドラマがある。
そうだ。テレ東は職人なんだ。
自分たちの進む道で、誰もやらないやり方でドラマを作る。職人だ。
出演者がムダに豪華で、さして必要にも思えないクイズをムリヤリ交えて他局がグルメを扱う時にも、
テレ東は、それ誰やねんと突っ込みたくなるような、よく食べる事だけがとりえのやかましい小太りおばさんが豪快に料理を頬張る。せいぜい顔と名前が一致するのは阿藤快ぐらいで、あとは髭きってほしいなぁとイライラさせるおじさんや、何を頬張っても無意味にエロいお姉さんなんかが番組を盛り上げる。グルメを取り上げる以上、余分なもの入らない。あくまで料理が主役。
取材拒否のお店一挙公開と、頑固と傲慢の区別が出来てないようなしかめっ面のジジィのラーメン屋を他局が自慢げに放映しても、テレ東はあくまでも独自取材で裏づけされたおいしい店の情報を、たとえそんなん教えてもらっても行けないよといいたくなるような山奥だろうが堂々と紹介する。
職人。職人だ。
かっこいい・・・・・・。
テレビ画面では、アイフルで一躍有名になったおじさん夫婦が、温泉をのんびりとめぐる映像が映し出されている。
普通ならまったく興味の湧かない赤の他人夫婦水入らずねぎらい合戦も、コマーシャルで実直・小心者そうなイメージを植え付けたおじさんに、あんた嫁さん外人やったんかい!という小さなサプライズを添えて見るものの目をひきつけてくれている。
小柄で意外にお洒落ぶったおじさんのせなかと、肉厚パツキンな嫁の後姿越しに夕日をとらえたシュールな絵で、今日もステキな温泉にこっそり夫婦のドラマを匂わせ、テレ東はマニアックに番組構成を展開させている。
渋い・・・。