チナウ
2003-08-22 (金) 慾 [長年日記]
■ 終章
「だれでもいいの。」
影はそう答え、話を続けた。
「あなたは何を求めているの?」
ドキッとした。
「あなたはほんとは何を求めているの?」
そう私は何を求めていたのだろう。
そう暖かいぬくもりを。
体全体を高揚されてくれる。
充足された日々。
何も足さない、何も引かない。
空気のように安心させてくれる。
そばにいるだけで幸せな。
そう暖かいぬくもりを。。
影は何かを差し出した。
勝手に両手が前に差し出してしまう。
訳もわからずそれを自然に受け取った。
受け取ったものを観ようとして下を向こうとしたとき、
影の気配が消えるような気がして
咄嗟に正面を見据えたが、既に影なく、暮れかけた西日を直視して
まぶしさに目がくらんだ。
眼球に光が残っている。
再度、受け取ったものを確認しようと、まじまじと手の中のものを眺めた。
光の向こうには、湯気が立ち、その下には甘酸っぱい香りが立ち上っている。
そうそれは、お好み焼きだった。
冷えたビールがたりねーな。そう想った。