チナウ
2005-11-25 (金) あの日あの時あの場所で [長年日記]
■ 君に会わなかったらー。
またまた友人に子供が出来たらしい。またか!
今回はきっちゃんがリーダーだという事でメールが入った。
【郵便局からの振込みメッセージみたよ!ジュンコが面白がって持ち歩いてるよ!】
・・・・ジュンコめ。
今でこそオモロキャラのジュンコだが、その昔、知り合ったばかりの頃は私たちを相手に恋多き女を気取り、恋愛指南をしようとしたというものすごく恥ずかしい過去を持っている。
その頃、キョウちゃんがアクションチームの先輩に恋をした。
恋どころか生き方全般的に不器用な奴の行動に、当時の私たちはハラハラしたり、時には涙が出るほど爆笑したりしていた。
キョウちゃんが勇気を振り絞って先輩を映画に誘った。アクションチームの恋だから、選んだ映画は当然チェン オブ ジャッキー。前売り券をもらったからという口実だが、もちろんそんなものあるわけがなく、当日券という名のあのちゃちな紙切を手にして勝負に挑むキョウちゃん。デートと思っているのはキョウちゃんだけで、とうの先輩はおえーっすとか言いながら眠たげに15分遅刻。当日券を見られないようにと入口でこそこそ出そうとするがそこは生き方が芸術的に不器用なキョウちゃん、お約束でマンガのようにつんのめり、手からは小さな半券の紙切れがヒラヒラと舞い散り、「はい。これ。」と普通に先輩に手渡され赤面する。見終わった後も先輩の「あんまおもんなかったな。」の心無い一言に打ちひしがれ、「じゃ、俺バイトだから。」とお茶もせず解散。もうだめだ脈まったくなしだとくじけるキョウちゃんを肴にゲラゲラと笑いながらお酒を飲む私とユカちんに、もっともらしい恋愛論を垂れ流すジュンコ。酒も回り、ジュンコの舌もすべらかとなり、酒で麻痺した私たちの脳味噌もジュンコのラブ☆論になんだか訳が分からないまま納得しかけた時、ジュンコが絶妙のタイミングで名言を吐いた。
「男はね、ワンナイトラブができる生き物なのよ。」
まてまてまてまて。ワンナイトラブて。ワーンーナーイートーラーブーてーーーーー!
総突っ込みを受けるジュンコは苦し紛れに更にバクダン発言。
「なによなによ、私はね、この前よく当たる占い師に【肉体の芸術家】って言われたんだから!!」
にーくーたーいーのーげーいーじゅーつーかーてーーーーー!!!
【今の話の流れに関係ないやん】【あんた何相談してんねん】とまたもや総ツッコミしたが、酒に酔った私たちの声は思いのほかでかく、肉体の芸術家発言は小さなコジャレバーに響き渡り、気がつけば店中の人が私たちの会話を全身全霊で盗み聞きしている状態となってしまった。
店をそそくさと出る私たちに連れられたジュンコは、それでも店の外でユラユラとゆれる怪しげな踊りをあみだし披露。それを伝授してもらううちに酔いが余計にまわる私たち。その後キョウちゃんが明日先輩に渡すという手作りクッキーを絶妙のタイミングで取り出した。味見をしたら、クッキーをどう作ればこんな不愉快な味になるのかという刺激的なまずさで全員がリバース。頭痛と悪寒まで感じ始めた私たちは、一番近いユカちゃんの家に泊まりこみ、翌日仲良く二日酔いで学校をサボった。
そんなダサイキョウちゃんを尻目に、狙っていた彼をまんまと落としたジュンコ。口説いたくせにしかたなく惚れられたというスタンスを貫きたいという無駄な乙女心が、ジュンコのシンプルな脳味噌と直結し無意味なウソを連発。またもや総ツッコミにあう。
「・・・で、その後お泊りしたの。」
「芦屋のラブホなんていくなよ。地元やん。」
「ちがうのよちがうのよ!!新しいパンプスが痛くて靴づれおこしちゃって・・・。終電もなかったししかたなくよ!!」
「カッター持って自分でザクザクやったんとちゃうんか。」
「家近いし帰れたやろ。」
「ちがうのよちがうのよ!!終電がなくてしかたがなかったのよ!!」
「・・・・・。」
「でね、部屋に入ってからおなかが痛くなったからちょっと寝転んで・・・」
「自分から布団に入ったと。」
「ちがうのよちがうのよ!!緊張もあっておなかが本当に痛かったんだから!!だからあっためようとおもってお風呂に入って・・・」
「自分からシャワーを浴びたと。」
「ちがうのよちがうのよ!!おなかが本当に痛かったんだから!!」
「・・・・・。」
「彼はとてもやさしかった・・・・」
「やっとるがな。」
「いたしとるがな。」
「そのあと窓の外にはじけた芦屋の花火を、私は多分一生忘れない・・・」
「ちょっとまて。どこの世界に終電過ぎてやってる花火大会があるのよ。」
「!!!!!!!」
「あーあ。花火って大体9時ごろに終るんだよね。」
「全然電車走ってるやん。」
「帰ろうと思えば帰れるやん。」
「お泊りパックにすらなってない時間やん。」
「やる気まんまんやん。」
「・・・ぅぅぅ・・・ウワーーーハッハーーーーーッッ!!ハハハハハーーーッッ!!」
「!!!!!!!!!」
「そうよそうよやってやったわ!!!やってやったわーーーーぃ!!!」
「うわ。きれた。」
「やってやったわ!!カッターで足ザクザクしてやったわ!!!」
「こっわーーーー!!」
「おいしくいただきましたわーーーーーーーー!!!」
その後も開き直り、聞いてもいないのにガンガンエロトークを炸裂させるジュンコ。途中から真剣気持ち悪くなり、耳を塞いでワーワーいう私たち。
このアタリからジュンコの汚れキャラは定着し、その後は自虐ネタを大得意とするいじられダイスキシモシモ大王へと成長した。
初めていったホテルが【パリ】という、地元では超有名な下世話ホテルだったという過去を罰ゲームでカミングアウトしたキョウちゃん。そんなキョウちゃんに、「私はベルサイユ!さすが私たちフランス文学科だね!」とウンザリするような一言を、罰ゲームでもないのに自ら曝露して全員を萎えさせたジュンコ。
彼が出来たばかりのエミコに、某ラブホテルがステキだったと執拗に勧めるジュンコ。ご丁寧に部屋番まで指定し、とにかくステキだったから言って来いというもんだから、よせばいいのに行ってしまったエミコ。値段、内装ともにどってことないフツーの部屋。特徴といえばテーブルにどっかりと置かれた立派すぎる落書き帳。そのハードカバーを何気なく開くと何ページ目かに見覚えのある文字が。
【ウェルカムエミコ!!ジュンコとひーちゃんのお部屋へようこそ!!今ココで誓います。私はひーちゃんの事、ずっとずっとDA☆I☆SU☆KI・・・DA☆YO!!! 】
【俺も大好きです!一生かわいいジュンコを守るよ!!】(←あきらかにこれもジュンコの字)
何がしたいのかサッパリ分からないジュンコの嫌がらせに、一同の非難が集中。【・・・DA☆YO】がまた最高にむかついたとはエミコ談。
それでもジュンコはひるむことなく、「あそこ、天井にも鏡あったやろ。お風呂は中の温度があがるとガラスがすけるやろ。」とか反省の色ゼロで、ニヤニヤといやな薄ら笑いを浮かべていた。
時がたち、今やジュンコも立派な二児の母。
可愛い息子2人を前にし、そのうちこの子たちも茶髪鼻ピーギャルを彼女として連れてくるよとかいって冷やかしていたら、底力のあるどすのきいた声で「そんな奴らしばく。」とつぶやくステキママとなった。
見たくもないのに目の前で子供に母乳を与え始め、気持ち悪いからあっちでやれと文句を言う私たちにむかって「ザ☆授乳ショー」といいながら襖の陰からチラチラみせるジュンコ。コーヒーを入れてくれるも砂糖しか出さず、あきらかに「ミルクは?」といわれるのを待っているのがミエミエだったので黙ってブラックで飲む私たち。
成長したのかしてないのか。
それでも青春は確実に過ぎ去った。
と。
そんな事を思い出しながらきっちゃんに振込みに行った。メールは、【私もメッセージ欲しいから郵便振込みにしようかと思った】とか、プレッシャーとしか言いようのない一言で締めくくられていた。何か面白い事しようかと思ったがめんどくさくなって、振込み人名をなげやりに【ボビー・オロゴン】と入力しておいた。
しばらくしてきっちゃんからメールが届いた。
【ウフフフフ。手抜きね。】
えらい言われようやな。