ぷっちん日記
2013-05-21 (火) 社長になってわかった「面談の仕方」
■ 社長になってわかった「面談の仕方」
2007年4月に会社(万葉)を作って社長になった。2008年に本格的に従業員を(知人ではなかった人たちを)採用した。
前働いていたベンチャーで、社長たちが期末の面談を重視していないのが嫌だったので、当初から"きまじめに"面談をやるように仕組み作りをした。
で、面談をしてみて驚いたことがある。
というのは、突如として私の面談スキルが飛躍的にあがっていたのである。自分でも驚くほど上手にできたのだ!
ここでいう上手というのは比較の問題で、比較対象は昔ベンチャーで開発本部長として働いていた頃の自分だ。そこそこの期間働いていたし、自分が面談が下手だという意識もなかったのだが、2008年に社長としてやった面談とは、全然質が違っていた。それはもう、衝撃的だった。
面談を終えた私は相棒の専務に、すごい勢いで話し始めた。「ねえねえ、私面談うまくなったよねー?!」もちろん、専務は「うんうん、すごく」と肯定してくれた。その後、どうして面談が急に上手になったのかを私はゆっくり考えた。ベンチャー時代にやっていた面談とはどこが違うのだろう?
すると、違いが思い浮かんできた。社長になってのぞむ面談では、私は目の前の従業員(部下)に対して、「会社にとって望ましい職業人になってもらうための指導と、本人の希望と会社の方向感をあわせる調整」をしていたのである。一方、ベンチャー時代にやっていたのは「従業員が機嫌を損ねないで、会社をやめないでくれそうな情報収集と、自分が得意な領域での多少の"一般的な"指導」だったのである。前者にあって、後者にないものがある。それは「会社の行きたい方向や、会社にとって望ましい社員のイメージを知っていること」であり、そして「そちらの方向を目指してもらうという意思」である。
ベンチャー時代の私は、会社がどんな従業員を望んでいるのか、明確に言葉にすることはできなかった。もちろん、そういう上からの指導がなかったということを言うこともできる(が、なんでもかんでも指導がなかったと言えばいいというものでもなかろう)。一応、思い浮かべてみるならば、「全員社長になったつもりで」とか「営業もやれ」とか「一人一人がビジネスをつくれるように」というようなことをおそらく社長は望んでいただろうと想像はついた。しかし、これらは<なるべくコードを書いていたい>という私自身の指向性とかけ離れているため、仮に明示されていたとしてもそちらにむけて部下を指導する気持ちにはなれなかっただろう。
そんなふうに、会社の望みと自分の望みが乖離しているとどうなるか。会社にとって望ましい像に向けて指導することはできないので、自分が比較的できる分野、たとえばコーディングならコーディング、についてはアドバイスができるということになる。あとは、部下が辞めるのはやはりつらいので、とりあえずご用聞きをして、問題があれば上と調整しようと考える。無理はないのだが、本当に寂しい中間管理職像といえる。
要点を整理すると、つまり、中間管理職がうまく部下を面談できるためには、
- 会社が従業員に何を求めているか知っている。
- 自分もそれに概ね賛成している。
- 会社の求めていることを部下に求めるという意思を持っている。
ということがとても重要なのだと思う。これらがあってはじめて、部下から困っていることや会社の方向性と違う部分を聞き出して調整するという役割も意味を持ってくる。これらがなければ、ある種の根無し草で、「価値観は人それぞれで、私が何かを押し付けることはできません。まあ、私は個人的にこれがいいと思いますよ。さて、何か困っていることはないですか?」ということになってしまう。これでは、上司による面談が多少でも効果があるかどうかは上司の個人的な資質に100%依存し、効果があればラッキーくらいなもので、組織を意味のある方向にまとめ育てていくという機能を期待することは無理だろう。
というようなことを経験してからは、会社の中間管理層に、積極的にそういうことが面談に必要だと思うということを伝えるようになった。