ぷっちん日記
2013-09-11 (水) 就職・転職活動と視点 [長年日記]
■ 就職・転職活動と視点
前々から気になっていたのだが、就職・転職活動をしている人の中には、採用されるために必要な大事なポイントに気づいていない人が一定割合いるような気がする。
これは大変に勿体ないことだ。おそらくそのポイントを抑えているかどうかで、勝率も大きく違うことだろう。特に、年齢が上がれば上がるほど、この点の違いは顕著に響いてくるはずだ。
そのポイントとは、「誰の視点で自己PRをするか」である。
典型的な「わかっていない人」の応募資料に書かれているのは、次のようなことである。
- 1. これまで自分が所属した世界のなかでどうがんばったか
- 2. 自分のやりたいこと、希望
- 3. 採用してくれたらがんばります
一見、何が悪いの?というような感じがするかもしれない。 そこまで悪くはないようにも見える。 しかし、このような応募資料を書いてくる人は、いわば「自分の視点」で就職/転職活動をしているといえる。
企業が採用したいのは、「相手の視点」で自己PRをしてくる応募者のほうである。 「相手の視点」で応募資料を書くと、次のような内容になる。
- 1. 御社において、自分にはどのような価値があるか
- 2. その価値と引き換えに、何を希望するか
- 3. どうして他社ではなく御社を選んだか
特に、それぞれの最初の項目についての差は致命的なまでに大きい。
- a. これまで自分が所属した世界のなかでどうがんばったか
- b. 御社において、自分にはどのような価値があるか
これは視点の差であるので、扱う題材自体は実は同じでも構わない。 例えば、「部活をがんばりました。辛いこともがんばれば乗り越えられると信じています。」を「部活で集団をまとめる苦労をしたので仕事でも複数の人と働くときに役立つと思います。」に変えるだけで印象は良くなる。 「前職で○×に打ち込みました。」を「前職の○×の経験は、御社でも〜の場面で役立つと考えております。」にすればよい。
なぜ企業は「相手の視点」で活動できる人をとりたいのか。それには次のような理由がある。
- 仕事には基本的に、お客様(お金を払ってくれる人)の視点での活動が必要である。就職活動でそれができない人よりも、できる人のほうが、職業人として有能である可能性が高い。
- 採用担当者の知りたいのは、自社にとってのその人の価値である。それが提示されていない人より、提示されている人のほうが、面談等に進んで時間をかけることのリスクが低い。
- 応募先の会社の視点で的を得た自己PRができるということは、採用後にその人が会社になじんで働ける可能性が高いということだ。その可能性が未知数の人に比べて、採用後すぐに辞めてしまったり、社内に溶け込めないといったトラブルが発生するリスクが低いのだから、採用したくなるのは当たり前だ。
ここまで読んで、合点がいった人は、ぜひ必要な際に実践してみてほしい。
しかし、ここまで読んでも、やはり相手の視点で書類を書けそうもない、という人もいるかもしれない。その場合の理由として私が思い浮かべるのは次の2つだ。
- 1. 自分がその会社にとって本当はあまり価値がないと感じていて、アピールに書くことが見つからない
- 2. 相手の会社や業界を知らないために、相手視点になれない
まず1について。自分がその会社にとって本当に価値がないと思うなら、応募をあきらめるべきである。相手に提供できる価値はないけれど、自分はそこから給料をもらいたい、というのは筋が通らないからだ。しかしながら、大抵の場合は、よく探せば、なにかしらアピールできる材料が見つかる。そこに光を当てるべきだ。
例えば、次に挙げるようなロジックの例は、メインの仕事についていまは大した価値を提供できないといった場合にも役に立つ。
- メインの仕事については素人だが、これまでやっていた別の仕事の経験を生かせる。最初はそれをやりながらでも構わない。
- 未経験だが、○○な性格なので、〜では能力が発揮出来ると思う。
- 戦力になるまでは給料は安くてよい。
- 三ヶ月後にはこんな風に働けます。
ちなみに、性格はどんな性格でもそれなりにアピールをすることができる。
- 好奇心が強いので新技術の情報発信や調査で役立てるのでは
- 人のやりたがらないコツコツした作業が好きだから、困っていることがあればお役にたちたい
- 慎重なので〜に向いている
- 人が好きなのでお客様とお話をしたい
次に、2の、相手の会社や業界を知らないために相手視点になれない場合について。
これに関しては、その人の年齢や社会人経験の度合いで状況が違ってくる。例えば、新卒の場合は、会社について具体的な想像ができなくてもある程度仕方がない。採用するほうも仕方がないと思って選考するので、あまり気に病まなくても、出来る範囲で会社とは、社員とはといった想像をすれば間に合うことが多いだろう。
社会人経験がある人で、転職先の会社や業界で働くことについてまったく想像がつかないのであれば、それは準備不足だ。採用されたいのであれば、応募するまえに、情報を集めよう。業界にいる知人にごはんでもおごって、イメージできるように情報を仕入れよう。人脈がなければ、本を読むのもよいだろう。